米国ダイズ品種から検出された耐倒伏性に寄与する量的形質遺伝子座

要約

ダイズの耐倒伏性に寄与する量的形質遺伝子座(QTL)が第13染色体に検出され、米国品種と日本品種との交配後代系統のうち、米国品種由来の遺伝子型を持つ系統は耐倒伏性が向上する。複数の遺伝背景でその効果が確認されたことから、耐倒伏性の高い日本品種開発への活用が期待できる。

  • キーワード : ダイズ、耐倒伏性、量的形質遺伝子座(QTL)、米国品種
  • 担当 : 東北農業研究センター・水田輪作研究領域・水田作物品種グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

近年、ダイズの生産現場では圃場の大規模化が進み、より効率的に機械収穫可能な品種特性が求められている。倒伏は、コンバイン収穫において刈取りロスを発生させる上、作業速度の制限にも繋がることから、耐倒伏性は重要な育種形質である。耐倒伏性の向上には草丈を短くすることが有効であるが、節数やバイオマスの減少により減収に繋がる。米国では、耐倒伏性を備えながらも多収化を実現しているダイズ品種が多く知られている。そこで、本研究では、米国品種と日本品種との交配後代を用いて遺伝解析を実施し、収量性を保ちながら耐倒伏性を向上させる、米国品種の遺伝要因を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 本研究に用いた米国ダイズ品種「UA4805」および「LD00-3309」は、日本品種「フクユタカ」および「サチユタカ」よりも倒伏程度が小さく、耐倒伏性が高い(表1)。
  • 「フクユタカ」と「UA4805」との交配により作出した組換え自殖系統群(FU-RILs)を、開花関連遺伝子の遺伝子型により早生系統群と晩生系統群に分類し、倒伏角度データを全国複数箇所で取得した。QTL解析の結果、作物研(茨城県つくば市)で供試した早生系統群および晩生系統群において、第13染色体に有意なQTL(qLT13-1)が検出された(図1)。
  • FU-RILsのうちqLT13-1の対立遺伝子型をUA4805型で持つ系統群は、フクユタカ型で持つ系統群に比べて倒伏角度が小さく耐倒伏性が高く、茨城県の他に、兵庫県、福岡県でもその効果が見られる(図2)。
  • QTL解析時とは異なる日本品種「サチユタカ」と米国品種「LD00-3309」との交配により作出した組換え自殖系統群(SL-RILs)を東北研(秋田県大仙市)で栽培し、倒伏の程度に応じて5段階で評価すると、qLT13-1と同じ領域をLD00-3309型で持つ系統群は、サチユタカ型で持つ系統群に比べて倒伏程度が小さく、耐倒伏性が高い(図3)。
  • qLT13-1を米国品種型でもつ系統群は日本品種型でもつ系統群と比較して、主茎長がFU-RILsでは4~13cm、SL-RILsでは12~20cm短いものの、主茎節数は最大でも1節少ない程度であり、いずれの結果においても収量性に負の影響は見られない(データ略)。

成果の活用面・留意点

  • 米国品種を用いた多収品種育成の際に、耐倒伏性を選抜するためのマーカー開発に向けた情報として活用できる。
  • 本研究では、米国品種「UA4805」および「LD00-3309」におけるqLT13-1の効果を示したが、他の米国品種が本QTLを保有するかどうかは未確認である。
  • qLT13-1近傍には、節間伸長に関与する遺伝子(Wang et al. 2021)、および、密植条件での徒長に関与する遺伝子(Qin et al. 2023)が座乗するため、耐倒伏性の向上にはこれらの遺伝子型全てを考慮する必要がある。

具体的データ

表1 本研究に供試した品種の倒伏程度、主茎長および開花まで日数,図1 FU-RILsにおける倒伏角度に関するQTLのLODプロット,図2 FU-RILsにおけるqLT13-1対立遺伝子に関連した倒伏角度の比較,図3 SL-RILsにおけるqLT13-1対立遺伝子に関連した倒伏程度の4年間の比較

その他

  • 予算区分 : 農林水産省(先導プロジェクト、戦略的プロジェクト研究推進事業 : 育種ビッグデータの整備および情報解析技術を活用した高度育種システムの開発)
  • 研究期間 : 2016~2022年度
  • 研究担当者 : 菱沼亜衣、福田篤徳、杉本琢真(兵庫県農総センター)、内川修(福岡県庁)、森田茂樹(福岡県庁)、奥野竜平((株)農社)、加藤信、菊池彰夫、佐山貴司、横田侑子、清水武彦、田口文緒、小木曽映里、加賀秋人、平田香里、山田哲也、藤井健一朗、李鋒、羽鹿牧太、石本政男
  • 発表論文等 : Hishinuma et al. (2025) Breed. Sci. 75:224-235