要約
ダイズ野生種から検出されたダイズ黒根腐病抵抗性に寄与する量的形質遺伝子座(QTL)は、第8染色体、第13染色体、第3染色体上にあり、これらを利用して栽培種である「エンレイ」の抵抗性を強化することができる。
- キーワード : ダイズ黒根腐病抵抗性、ダイズ野生種、量的形質遺伝子座、QTL
- 担当 : 東北農業研究センター・水田輪作研究領域・水田作物品種グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
東北・北陸で被害が多いダイズ黒根腐病は、土壌糸状菌Calonectria ilicicola により引き起こされる立枯性病害で、重症化により最大で30%程度減収することに加え、小粒化等の品質低下を招く。本病害の病原菌は土壌中で長期にわたり生存することから防除が困難なうえ、抵抗性を有するダイズ栽培種は知られていない。そこで、本研究ではダイズ野生種3系統(野生種7(JP30157)、9(JP30159)、27(JP36084))が持つ抵抗性に寄与するQTLをQTL解析およびQTL-seq解析により検出し、QTLの栽培種への導入によりその効果を明らかにする。
成果の内容・特徴
- ダイズ野生種3系統(野生種7、9、27)のダイズ黒根腐病抵抗性に寄与するQTL、qRci1は野生種9の第8染色体、qRci2は野生種7、9の第13染色体、qRci4は野生種7、27の第3染色体に存在する(図1)。
- これらのQTL(qRci1、qRci2、qRci4)を含む野生種ゲノム領域を栽培種である「エンレイ」に戻し交配で導入すると圃場でのダイズ黒根腐病の発病程度が低減する(図2)。
- qRci1を含む野生種ゲノム領域を「エンレイ」に導入すると種皮色・へそ色がともに褐色となり、粒(百粒重)は小さくなる傾向がある。qRci2を含む野生種ゲノム領域を導入すると、種皮色は黄で褐色の斑模様が現れ、主茎長が大きくなる(表1)。
成果の活用面・留意点
- 本研究における知見およびQTL導入系統は、ダイズ黒根腐病抵抗性品種の開発に活用できる。
- 抵抗性QTLの効果は、一部地域における「エンレイ」を用いた試験結果によるものであり、導入する品種や利用する地域によっては更なる効果の確認が必要となる。
- 抵抗性QTL領域の導入で種皮色や粒大、主茎長等の形質に影響が出る。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、農林水産省(農林水産分野における気候変動対応のための研究開発 : 温暖化の進行に適応する品種・育種素材の開発、イノベーション創出強化研究推進事業)
- 研究期間 : 2017~2024年度
- 研究担当者 : 南條洋平、菱沼亜衣、田口文緒、三室元気(富山県)、小林光智衣、矢野亮一、水林達実、許東河(JIRCAS)、加賀秋人、髙橋浩司、姜昌杰
- 発表論文等 : Taguchi-Shiobara F. et al. (2025) Theor. Appl. Genet.138:274