乾田直播を基軸とした水田輪作体系の高能率化を図る水田の簡易な合筆手法

要約

営農による合筆において、隣接する圃場の畦畔を撤去するが、土の移動は行わずに10~20cmの高低差は許容し、その位置に乾田直播栽培の入水直前に畦畔を築立する。これにより水稲栽培時の適正な水管理、および長辺方向の効率的な作業を可能とし高能率な水田輪作を実現する。

  • キーワード : 合筆、水田輪作、水稲乾田直播、子実トウモロコシ、ダイズ
  • 担当 : 東北農業研究センター・水田輪作研究領域・ICT活用技術グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

土地利用型農業において作業能率を向上するためには、区画の大きい圃場で大型機械を使用することが効果的である。営農的に畦畔を撤去し、レベラーなどを用いて合筆できるが、数haの規模では大量の土移動に多くの労力を要することや、圃場の切盛に伴い生育が不均一になるなどの問題がある。そこで、隣接する圃場が10cm程度の低平地水田において、既設の畦畔を除去し、合筆後の一筆全体の均平作業は実施せずに、高低差が10cm以上の場合は、水稲乾田直播の入水直前に仮畦畔を築立することにより、水稲栽培時には適正な水管理が可能な合筆手法を考案する。これにより各種作業は合筆後の圃場長辺方向に効率的に実施可能となり、より高能率な水田輪作体系を実現する。

成果の内容・特徴

  • 簡易な合筆手法では、チゼルプラウやロータリ耕うん機により畦畔を除去し、隣接する旧耕区の高低差が10cm以内となる圃場単位(仮耕区)を設定し、仮耕区毎に均平作業を行う。隣接する仮耕区の高低差が10cm以上となる場合は、均平作業は実施しないが、水稲乾田直播栽培時の入水後に低い仮耕区で水深が深くなるため、水稲の出芽後、入水直前に仮耕区の境界に畦塗り機で畦畔を築立し、仮耕区単位で水管理を行う。水稲収穫後は仮畦畔を除去する(図1)。
  • 畑作時や乾田直播の播種などの作業は合筆後の長辺方向で実施する。圃場区画面積の増加に伴い、乾田直播の播種作業の作業能率が向上する(図2)。畦畔を撤去することにより、短辺と長辺が入れ替わる場合や、100m×100mの圃場などを合筆して長辺長が増大する場合は、面積あたりの旋回回数の減少により作業能率が向上する。
  • 99kw(135ps)のトラクタで3m以上の作業幅を有する機械を用いた水田輪作作業体系(表1)により、水稲「つきあかり」、子実トウモロコシ「34N84」、ダイズ「そらひびき」の順で輪作する場合、収量水準は品種の効果や輪作による圃場条件の改善などにより、地域慣行に比べて同等以上となる結果が得られている(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 同一作物の圃場を1つのブロックに集積させた際に簡易な合筆を実施し、ブロック毎に輪作するブロックローテーションとすることで、より効率的な作業が可能になる。また大規模な作土、基盤土の移動が伴わないことや、従来の切盛を伴う合筆手法に比べ現況復旧が容易であることから、これまで合筆への理解を得ることが難しかった地域では新たな提案が可能になる。
  • 本研究の現地実証試験は、宮城県大崎市において2023年の作付け前に1.8~2.8haに合筆した圃場で実施した。その際の仮耕区の高低差は約15cmであった。
  • 仮耕区の高低差が大きい場合、仮耕区の低い方の田面からは仮畦畔の高さが高くなるため、高低差は20cm以下であることが好ましい。
  • 築立する仮畦畔の高さについては、仮耕区内の不陸や田面水の吹き寄せなどを考慮すると、仮耕区の高い方の田面から30cm程度とすることが好ましい。30cm程度の仮畦畔を築立する場合には、畦塗り機で2工程(2往復)の作業を行う。平らな状態から、1工程目で築立する畦畔の土を寄せて、2工程目で所定の高さまで築立する。通常の畦塗りと同様に土壌の水分が高い状態で作業する必要がある。
  • 畦畔の撤去は、チゼルプラウ、ロータリ耕うん機を装着したトラクタで、畦畔の法面上を走行しながら耕起することで畦畔を崩す。畦畔を崩した位置を1~2工程、耕起することで、その後の作業に支障が出ない程度まで平らになる。

具体的データ

図1 簡易な合筆手法の模式図,図2 圃場区画面積と作業能率の関係,表1 水田輪作における作業体系,表2 各作物の収量

その他

  • 予算区分 : 交付金、農林水産省(農林水産研究の推進 : 子実用とうもろこしを導入した高収益・低投入型大規模ブロックローテーション体系の構築プロジェクト)
  • 研究期間 : 2023~2025年度
  • 研究担当者 : 冠秀昭、篠遠善哉、屋比久貴之、幸田和也、古畑昌巳、田中惣士、田邊大、狗巻孝宏、出口新、宮地俊輔、関矢博幸、齋藤秀文(農研機構)
  • 発表論文等 : 冠ら(2025)農業農村工学会誌、93:333-338