土壌中の交換性カリウムの影響を除いても、玄米および大豆の放射性セシウム濃度は数年で低下する

要約

玄米および大豆の放射性セシウム濃度は、2012年以降ではいずれの作物でも2012年で最も高く、それぞれ2016年および2014年まで低下し、それ以降は2020年まで一定の傾向は認められない。これら経年変化は土壌中の交換性カリウム含量の影響から独立している。

  • キーワード : 放射性セシウム濃度、経年低下、玄米、大豆
  • 担当 : 東北農業研究センター・農業放射線研究センター・早期営農再開グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所の事故により放出された放射性セシウムのうちCs-137は物理的減衰による半減期が約30年と長い。そのため、土壌から農作物へのCs-137の移行については長期間にわたる対策が必要である。Cs-137は土壌中の粘土鉱物に固定されて農作物に吸収されにくくなり、農作物のCs-137濃度は年々低下することが知られている。一方で、福島県においてはCs-137の吸収抑制対策として2012年以降に水田および大豆畑へのカリウム上乗せ施用がなされており、この対策によっても玄米および大豆のCs-137濃度は低下していると考えられる。したがって、観測される玄米および大豆のCs-137濃度の経年変化には、両方の影響が含まれている。本研究では、カリウム上乗せ施用の効果によらない経年変化を明らかにするために、玄米および大豆のCs-137濃度調査の結果を統計モデルにより解析する。

成果の内容・特徴

  • 本研究では、玄米および大豆のCs-137濃度を、生産ほ土壌の交換性カリウム含量、作目(玄米および大豆)、年次(2012年から2020年)、地域(福島県の浜通り、中通りおよび会津)および土壌のCs-137濃度から推定する式(1)を構築する。

    log(α)=b0+b0,*I*+b1log(ExK)+γ1log(total-Cs-137)+γ2log(Ex-Cs-137)・・・式(1)

    ここで、αは子実のCs-137濃度、b0は濃度の基準値、b0,*は作目・年次・地域の補正項、I*は指示関数、total-Cs-137は土壌中の全Cs-137濃度、Ex-Cs-137は土壌中の交換性Cs-137濃度を示す。土壌の汚染指標として全Cs-137濃度を使う場合はγ1=1、γ2=0とし、交換性Cs-137濃度を使う場合はγ1=0、γ2=1とする。パラメータの採否は赤池情報量基準(AIC)によるモデル選択により判断する。
  • この解析により、交換性カリウム含量および地域の影響から独立して、年次変化を定量的に明らかにできる。
  • 農林水産省消費・安全局が2012年から2020年までに調査した、水稲のべ1244筆、大豆のべ344筆の結果を解析に供する(図1)。
  • 玄米のCs-137濃度は2012年が最も高く、2013年からは2015年までは同程度で推移し、2016年に低下した後は2020年まで増減はあるが一定した変化はない(図2)。
  • 大豆のCs-137濃度は2012年が最も高く、2013年と2014年に前年より低下した後は2020年まで増減はあるが一定した変化はない(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 2012年から2020年までのCs-137濃度の低下幅は玄米よりも大豆の方が大きいが、どの年次においてもCs-137濃度は玄米よりも大豆の方が高い。
  • 作物や土壌は5点法で採取された試料である。

具体的データ

図1 試料の採取地点,図2 玄米Cs-137濃度の推移,図3 大豆Cs-137濃度の推移

その他

  • 予算区分 : 交付金、農林水産省(農林水産分野の先端技術展開事業 : 特定復興再生拠点区域等の円滑な営農再開に向けた技術実証)
  • 研究期間 : 2021~2025年度
  • 研究担当者 : 藤村恵人、山村光司、石川淳子、久保堅司、若林正吉、信濃卓郎(北海道大学)、丸山隼人(北海道大学)、鈴木政崇(北海道大学)
  • 発表論文等 : Fujimura S. et al. (2025) Sci. Total Environ. 995:180044