ダイズの葉齢進展モデルを活用した多筆圃場における帰化アサガオ類の適期防除効果
要約
ダイズの葉齢進展モデルから除草剤の散布適期を予測することで、ダイズ作の難防除雑草である帰化アサガオ類の防除効果を高める。モデルを活用することで圃場毎の除草剤散布適期を予測できるため、ダイズ多筆圃場群においても帰化アサガオ類を効率的に防除することが可能になる。
- キーワード:多筆圃場、ダイズ葉齢進展モデル、適期防除、マルバルコウ、マメアサガオ
- 担当:西日本農業研究センター・中山間営農研究領域・地域営農グループ
- 代表連絡先:
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
帰化アサガオ類は発生期間が長く、除草剤の効果も低いため、ダイズ作における難防除雑草である。帰化アサガオ類に対する有効な防除手法の一つとして、複数種の除草剤を組み合わせた体系防除が挙げられる。しかし、除草剤の枯殺効果は帰化アサガオ類の生育初期ほど高いため、散布適期を逸した(遅れた)場合には防除効果が大幅に低下する。よって、多筆圃場の帰化アサガオ類を効率的に防除するためには圃場毎の除草剤の散布適期を予測する技術の開発が求められている。
そこで、本研究では帰化アサガオ類の要防除期間におけるダイズの葉齢進展モデルを開発し、集落営農法人のダイズ多筆圃場において、モデルの有効性およびモデル導入後の帰化アサガオ類の防除効果を明らかにする。
成果の内容・特徴
- ダイズの葉齢進展は次の(式1)で推定できる。
ダイズ出葉速度(LER、day-1)= a × (T-Tb) (式1)
a:定数(0.018 leaf day-1°C-1)、T:日平均気温、Tb:ダイズ品種ごとの日平均気温の閾値(「サチユタカ」ではTb=9.08、「あきまろ」ではTb=10.53と設定)
有効積算温度と各品種のダイズ葉齢には高い正の相関がある(図1)。葉齢の予測値と実測値との誤差は3日程度で、実用上問題のない程度でダイズの葉齢を推定できる。
- ダイズ葉齢に基づく除草剤の散布適期内の帰化アサガオ類の葉齢進展は草種によって異なり、マメアサガオはマルバルコウと比較して葉齢進展が早い(図2)。帰化アサガオ類に対する除草剤の効果は生育初期ほど高いため、初期生育の早い草種に対しては、より早期の除草剤散布が必要となる。
- 集落営農法人の約230圃場において、式1で算出したダイズ葉齢の予測値を基にして適期に除草剤を散布した圃場群では帰化アサガオ類の残草面積割合(達観調査により6カテゴリーに分類(表1))が有意に低下する(図3)。
成果の活用面・留意点
- 本試験で実施した防除体系は、ダイズ播種時のジメテナミドP・リニュロン乳剤の土壌処理、ダイズ2葉期のベンタゾン液剤の茎葉処理およびダイズ5葉期の非選択性茎葉処理剤グルホシネート液剤の畦間・株間処理の除草剤3回処理体系であり、いずれの除草剤も農薬登録の最大薬量で散布したものである。近年、本防除体系よりも省力的な防除体系も提案されており(診断に基づく大豆栽培改善技術導入支援マニュアル、農研機構2020)、非選択性茎葉処理剤の畦間・株間処理が困難な場合には選択性茎葉処理剤の全面散布でも代替が可能である。
- ダイズの葉齢進展モデルのTb値は農研機構西日本農業研究センター(広島県福山市)内圃場で実施した7作付の作期移動試験の結果からMicrosoft Excelのゴールシークで最適値を算出した。Tb値は品種ごとに設定する必要があり、また「サチユタカ」や「あきまろ」のTb値についても地域性を考慮して数値を再調整する可能性がある。
具体的データ
その他
- 予算区分:交付金、農林水産省(地域戦略プロジェクト)
- 研究期間:2016~2018年度
- 研究担当者:浅見秀則、髙橋英博、奥野林太郎、橘雅明、本間香貴(東北大)
- 発表論文等:浅見ら(2021)雑草研究、66:1-10