マルバアメリカアサガオの種子は後熟により圃場での発芽率、生存率が高くなる

要約

難防除雑草マルバアメリカアサガオの硬実種子は硬実化の過程で発芽能力が変化する。親個体上での十分な後熟期間を経ることで、圃場落下後の発芽率および土中での生存率が高くなる。従って、種子の成熟前に土中へ埋設することが翌年の埋土種子量の低減策として、有効である。

  • キーワード:帰化アサガオ類、マルバアメリカアサガオ、硬実種子、後熟、発芽率
  • 担当:西日本農業研究センター・中山間営農研究領域・地域営農グループ
  • 代表連絡先:
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

ダイズ作の難防除雑草であるマルバアメリカアサガオ(帰化アサガオ類の一種)は硬実種子を生産し、圃場での発生期間が長く、ダイズ作においては生育中期までの防除を要する。マルバアメリカアサガオ種子の発芽メカニズムおよび圃場での出芽不斉一性の要因を解明することは、圃場での種子の出芽時期の制御や、埋土種子の低減方策立案の一助となる。
そこで、本研究ではマルバアメリカアサガオ種子の硬実程度に着目し、親個体上での着果期間の違いが種子の発芽能力や圃場での発芽率、生存率に及ぼす影響を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • マルバアメリカアサガオの種子は蒴果内での成熟に伴い外観が変化し、開花21日後時点では白色未硬実の種子が黒色未硬実の期間を経て、開花後約30日までの間に硬実化が進む(図1)。硬実化の進展とともに種子水分が減少し、硬実化が完成する開花約40日後以降は水分含量の変化はない(データ略)。
  • 種子は開花約25日後から発芽能力を有し、未硬実の期間に発芽率は一時的に高い値を示すものの、硬実完成後には急激に低下する(図2)。しかし、翌年4~6月(開花210~270日後)には種子は硬実打破が可能となり、発芽率が上昇する。
  • 結実後、圃場の地表面に落下した種子は翌年5月以降に出芽を開始し、親個体上の後熟期間が長い種子ほど出芽率が高い(図3)。また、後熟期間の長い種子ほど遅い時期の出芽が増える。
  • 親個体上での後熟期間の長い種子ほど土中に埋設した種子の翌年秋季の生存率が高い(図4)。一方、未硬実種子(開花30日後に採集し直後に土中へ埋設)の翌年生存率は0%である(図4)。土中に埋設した種子の一部は11~12月に出芽するが、越冬できずに枯死する(データ略)など、翌年秋季の非生存種子の大半は晩秋の発芽・出芽による低温下での枯死あるいは土中発芽後の腐敗により死滅する。

成果の活用面・留意点

  • 本研究の結果は、マルバアメリカアサガオの種子が親個体上での十分な後熟を経ない、早期の土中埋設によって、翌年以降の圃場での出芽数減少と、埋土種子量の低減を示唆しており、ダイズ収穫後の早期の土壌埋設処理によって翌年度以降の生存率を抑制できる可能性がある。ただし、広島県でのマルバアメリカアサガオの開花期間は8月下旬~10月上旬であり、ダイズ作付圃場ではダイズ収穫前に硬実種子が成熟する。したがって、本成果、すなわちマルバアメリカアサガオ種子成熟前の土壌埋設処理は作型によってはダイズ圃場での実践が困難な場合があり、アサガオ蔓延による収穫放棄圃場や未作付圃場等での活用も想定される。
  • 本成果は広島県福山市内のダイズ圃場で発生していたマルバアメリカアサガオの種子を採種し、栽培して増産した種子を供試して得られた結果である。本種の出芽パターンや種子生存率の変異の地理的、立地的差異については今後検討する必要がある。

具体的データ

図1 マルバアメリカアサガオ種子の外観の変化,図2 マルバアメリカアサガオ種子の発芽率の推移,図3 マルバアメリカアサガオ種子の累積出芽率,図4 マルバアメリカアサガオ種子の生存率

その他

  • 予算区分:交付金、農林水産省(生産現場強化のための研究開発:多収阻害要因の診断法及び対策技術の開発)
  • 研究期間:2017~2020年度
  • 研究担当者:浅見秀則、石岡厳、本間香貴(東北大)
  • 発表論文等:Asami H. et al. (2021) Weed Biol. Manag. 21:183-191