土壌水分センサーEC-5・5TE・5TMの簡易迅速校正法

要約

1回の土壌採取による土壌水分量(体積含水率)の測定によって、土壌や設置条件、センサーの個体差を包含した、個々のセンサーの校正式を決定する方法である。既往の校正法に較べ、手間と時間の両方を大幅に削減できる。

  • キーワード:土壌水分センサー、体積含水率、EC-5、5TE、5TM、校正法
  • 担当:西日本農業研究センター・中山間営農研究領域・地域営農グループ
  • 代表連絡先:
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

土壌水分センサーを使用する際には、使用する圃場や土壌に対してセンサーの校正を実施する必要がある。センサーの発売元から提示されている校正式を使用することも不可能ではないが、適合しない場合も見受けられる。そこで、土壌やセンサーの個体差を包含しつつ、カタログ値と同等の適合精度を確保できる、簡易で迅速な校正法の開発が求められている。
本研究では、研究や実際の生産現場で広く用いられているMETER社の静電容量式土壌水分センサーのうち、EC-5(測定項目:体積含水率)、5TE(測定項目:体積含水率・温度(地温)・電気伝導度)、5TM(測定項目:体積含水率・温度)を対象に、1回の土壌採取によって個々のセンサーの土壌や作付条件に対する校正式を取得する方法と、カタログ値と同等の適合精度を確保できる土壌採取時の出力値(RAW)の範囲を提示する。

成果の内容・特徴

  • 本法は、1回の土壌採取による土壌水分量(体積含水率)の測定によって、土壌や設置条件、センサーの個体差を包含した、個々のセンサーの校正式を決定する方法である。センサーを使用する圃場から採取した土壌に対して土壌水分量の調製と測定容器への充填、出力値の測定を数回繰り返して、センサーの校正式を決定する既往の校正法に較べ、手間と時間の両方を大幅(5回程度から1回)に削減できる。
  • 本法の手順は、以下の通りである(図1)。(1)センサーを圃場等に設置後(図2)、体積含水率のモニタリング期間中に出力値RAWが出力値の条件を満たした時に、センサー近傍の土壌をサンプリングし、サンプリング時の出力値RAWθ'と炉乾法等で採取土壌の体積含水率θ'を入手する。(2)各種センサー向けに示した式(図3)にRAWθ'とθ'を代入して校正式を決定する。
  • カタログ値と同等の適合精度を確保できる校正式を決定できるようなサンプリングの時期は、得られた校正式の推定誤差が大きくならないRAWθ'である、EC-5ではRAWθ'>900、5TEと5TMではRAWθ'<450となる時期である(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 本法では、データロガーにはMETER社のEm50等を使用する必要がある。また、同社のEm60以降のデータロガーに5TEと5TMを接続して使用する場合には、RAWが1/50になるため、RAWを50倍して使用する必要がある。
  • 土壌採取は、センサー設置位置近傍の同一深さで行う。また、100ccサンプラー等を用いて土壌採取すると、乾燥密度も同時に測定可能である。
  • 本法は、乾燥密度が極端に低い(0.65Mg/m3未満)および重粘土については、対象としていない。

具体的データ

図1 簡易迅速校正法による校正式の決定手順,図2 水分センサーの設置図(EC-5を10cm深に設置した場合),図3 測定時の出力値(RAW)をもとに土壌体積含水率(θ)を算出するための採土によって決定した体積含水率θとその時のセンサー出力値RAWθ'を用いた校正式,図4 採土時のセンサー出力値RAWθ'と本法による体積含水率の算出値と炉乾法による実測値の間の二乗平均平方根誤差(RMSE)の関係

その他

  • 予算区分:交付金、農林水産省(地域戦略プロジェクト、経営体プロジェクト)、文部科学省(科研費:16K07953)、内閣府(地方大学・地域産業創出交付金)
  • 研究期間:2016~2021年度
  • 研究担当者:望月秀俊、坂口巌、糸川修司(高知県農技セ)、速水悠(高知県農技セ)、渕山律子
  • 発表論文等:
    • Mochizuki H. et al. (2020) Soil Sci. Plant Nutr. 66:531-540
    • 望月ら(2021)土肥誌、92:166-173
    • 望月ら(2021)土肥誌、92:339-343