イチゴ間欠冷蔵処理での非冷蔵期間平均28°C以上の高温遭遇は開花の遅れにつながる

要約

イチゴの間欠冷蔵処理では、冷蔵開始3日前から処理終了までの非冷蔵処理期間の平均気温が28°C以上の場合に、頂花房第1花の平均開花日が遅れる。特に「さちのか」では、高温遭遇時には夜温が高いほど開花が遅れやすい。

  • キーワード:促成栽培、花芽分化促進、頂花房開花日、品種
  • 担当:西日本農業研究センター・中山間畑作園芸研究領域・施設園芸グループ
  • 代表連絡先:
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

イチゴ促成栽培向けの新しい花芽分化促進技術である間欠冷蔵処理では、品種によっては高温年に処理効果が低下する場合があり、開花促進効果の安定化を図る必要がある。
そこで、本研究では、自然条件下での花芽分化時期が異なる3つの促成栽培向け一季成り性品種「さちのか」、「とちおとめ」および「さぬき姫」を用いて、間欠冷蔵処理における非冷蔵処理期間の温度条件が花芽分化促進効果に及ぼす影響を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 本成果は、3日間の冷蔵処理(15°C一定、暗黒条件)と3日間の非冷蔵処理(自然光下で生育)のセットを3回繰り返す間欠冷蔵処理を実施して得られたものである(図1)。
  • 非冷蔵処理期間の平均温度が30°C、28°C、26°Cの3段階である場合、頂花房第1花の開花は温度が高いほど遅れる傾向がある(図2)。平均開花日は「さちのか」と「とちおとめ」では30°C区は26°C区より12日以上遅れ、「さぬき姫」では28°C区では26°C区より5日遅れる(図2)。
  • 非冷蔵処理期間が高温で昼夜温較差が12°C、8°C、4°Cの3段階である場合、頂花房第1花の開花は「さちのか」と「さぬき姫」では8°Cおよび4°C区が12°C区より遅れる傾向がある(図3)。一方、「とちおとめ」では昼夜温較差による開花の遅れはほとんどみられない。
  • 「さちのか」では、非冷蔵処理期間の昼温30~34°C、夜温22~26°Cの範囲において、夜温が高いほど開花が遅れる傾向がある(図2、図3)。

成果の活用面・留意点

  • 自然条件下での花芽分化時期は、「さぬき姫」、「とちおとめ」、「さちのか」の順に早い。
  • 本成果で供試した品種では、非冷蔵処理期間3回のうち1回のみ高温遭遇する場合には、遭遇時期の影響はなく花芽分化促進効果も低下しない。
  • 上記の結果は、高温処理を人工気象室で実施して得られたものである。
  • 間欠冷蔵処理における非冷蔵処理期間の平均温度が28°C以上である場合には、頂花房第1花の開花日が遅れる恐れがあることから、高温が予想される場合には冷蔵処理開始時期を遅らせて高温遭遇を避けることが有効である。
  • 非冷蔵期間に高温が予想される場合には、昼間の昇温を抑制するために遮光資材の利用や育苗場所の換気をよくすること、細霧冷房の利用などが有効であると考えられる。ただし、日照不足の場合には40%の遮光率であっても花成誘導効果が劣ることが報告されているので、天候不良が続く場合には遮光資材の利用は避けたほうがよい。
  • 試験に供試した以外の品種を利用する場合には、自然条件下での花芽分化時期に留意する必要がある。

具体的データ

図1 本研究における間欠冷蔵処理の日程(いずれの試験年も同じ),図2 非冷蔵処理期間の温度が頂花房の開花株率と平均開花日に及ぼす影響(2014年),図3 非冷蔵処理期間の昼夜温較差が頂花房の開花株率と平均開花日に及ぼす影響(2015年)

その他

  • 予算区分:交付金、農林水産省(農林水産業の革新的技術緊急展開事業(うち産学の英知を結集した革新的な技術体系の確立))
  • 研究期間:2014~2019年度
  • 研究担当者:矢野孝喜、山中良祐、川嶋浩樹、山崎敬亮、吉田裕一(岡山大)
  • 発表論文等:矢野ら(2022)園芸学研究、21:307-313