要約
アスパラガスの地下茎を解剖することで、分枝様態を明らかにすることができる。アスパラガスの分枝様態には品種間差異があり、地下の側枝葉数が少なく分枝が多い品種と、地下の側枝葉数が多く分枝が少ない品種が存在する。前者は後者に比べ総収穫本数が多いが、可販本数は同等である。
- キーワード : アスパラガス、地下茎、分枝、収量、可販率
- 担当 : 西日本農業研究センター・中山間畑作園芸研究領域・園芸作栽培・畑作物育種グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
アスパラガスは年間を通じて単価が高く、中山間地域における高収益作物の1つである。一方、アスパラガスの収穫および出荷調製作業には多大な労働時間を要することから、省力化が求められている。そこで本研究では、可販率向上による収穫・出荷調製作業の省力化を目的に、可販率を高めるためのアスパラガスの地下茎(鱗芽群)の分枝様態を明らかにするとともに、収量性との関係を明らかにする。また、分枝様態の調査方法を提示する。
成果の内容・特徴
- アスパラガスは、播種後、地中で発芽するとただちに分枝を開始し、多数の側枝およびその先端の茎頂分裂組織(shoot apical meristem、SAM)を含む地下茎を形成する。地下茎の分枝様態は、下位から順に側枝葉を除去し、除去の都度、葉腋の発達の有無を観察することで明らかにできる(図1)。
- アスパラガスの地下茎の分枝様態には品種間差異があり、「ウェルカム」は分枝が多く、「りゅうりょく」や「ゼンユウガリバー」は分げつが少ない(表1、図2)。「ウェルカム」は地下の側枝葉数が少なく(データ省略)、本特性はSAM数を旺盛に増やす上で有利に働くと考えられる。
- 分枝が少ない品種は総収穫本数は多くないが、細い若茎が少ないため可販本数は他の品種と同程度であり(表2)、省力的に収穫できる可能性がある。
成果の活用面・留意点
- 可販率が高く省力性に優れたアスパラガス品種の育種に活用できる。
- 本試験の結果は、いずれも温暖地においてパイプハウスを利用した立茎栽培による長期どり作型におけるものである。また、収量は2年生株について調査したものである。
- 地下茎の側枝葉を除去する際には、精密ピンセットや針、実体顕微鏡等を使用する。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金
- 研究期間 : 2020~2022年度
- 研究担当者 : 遠藤(飛川)みのり、池内隆夫(香川県農試)、香西修志(香川県農試)、中村智哉(香川県農試)、山地優徳(香川県農試)、山中良祐、吉越恆、川嶋浩樹
- 発表論文等 : Hikawa-Endo M et al. (2024) Hort. J. 93:160-168