要約
大豆新品種「そらたかく」は難裂莢性と葉焼病抵抗性を備え、「フクユタカ」と比較して約2割以上多収である。子実は「フクユタカ」と比較して小さいが、裂皮が少なく外観品質に優れ、豆腐の加工に利用できる。成熟期は「フクユタカ」とほぼ同じである。
- キーワード : 大豆、難裂莢性、多収、外観品質
- 担当 : 西日本農業研究センター・中山間畑作園芸研究領域・園芸作栽培・畑作物育種グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 普及成果情報
背景・ねらい
わが国の大豆の自給率は、食品用に限っても2割程度であり、需要の多くを輸入に依存している。このため、食料安全保障の観点からその向上が喫緊の課題である。国産大豆の収量は米国産大豆と比べ半分程度と低いことから、多収品種の開発・導入によりその向上を図ることが自給率の改善に不可欠である。そこで、収量は高いがタンパク質含有率が低く豆腐の加工適性に劣る傾向にある米国品種と、同加工適性が高いわが国の品種との交配により、多収で豆腐の加工に利用できる大豆品種「そらたかく」を育成し、その普及を図る。
成果の内容・特徴
- タンパク質含有率が高く豆腐の加工に向くわが国の品種「たつまろ」を種子親、多収の米国品種「Santee」を花粉親とする人工交配から育成された品種である。
- 近畿中国四国地域での成熟期は "晩"に分類され、「フクユタカ」とほぼ同じである(表1)。茎の長さは「フクユタカ」よりやや長いが(表1、図1)、倒伏程度は「フクユタカ」より低い(表1)。子実重は「フクユタカ」より標準播種(6月播種)で3割程度、晩期播種(7月播種)で2割程度多い(表1)。百粒重は「フクユタカ」より軽いが、へその色が「フクユタカ」の"淡褐"と異なり"黄"であり、裂皮が少なく子実の品質が高い(表1、図1)。
- 近畿および九州地域の生産者圃場における現地実証試験では、「フクユタカ」より平均5割程度多収である(表2)。
- 「フクユタカ」は葉焼病に"感受性"であるのに対し、「そらたかく」は"抵抗性"である(表1)。ダイズモザイクウイルス抵抗性については、「フクユタカ」がA、B系統にのみ抵抗性である一方、「そらたかく」はA、A2およびB系統に抵抗性である(表1)。
- 粗タンパク含有率は「フクユタカ」よりやや低い"中"に分類される(表1、表2)。第三者検査機関の加工試験の結果では、「フクユタカ」と比較して豆乳抽出率は同等、豆腐の破断強度はやや低い(表3)。
普及のための参考情報
- 普及対象 : 大豆生産者、豆腐・納豆および味噌等の加工事業者、普及指導機関。
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : 東海~九州地域を中心とする西日本地域で200ha程度の普及を見込む。
- その他 : ダイズシストセンチュウに感受性であるため、被害履歴のあるほ場での作付けを避ける。また、立枯性病害の蔓延を防ぐため、適切な輪作および排水対策を励行する。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、農林水産省(スマート農業技術の開発・実証プロジェクト、先導プロジェクト)
- 研究期間 : 2014~2023年度
- 研究担当者 : 佐山貴司、髙田吉丈、小松邦彦、山下謙一郎、猿田正恭
- 発表論文等 : 佐山ら「そらたかく」品種登録出願公表第37243号(2024年5月20日)