フレールモア等を用いた荒廃農地等の再生技術

要約

かん木(低木)の破砕に対応したフレールモアを用いることにより、荒廃農地に侵入したかん木の伐木と持ち出しに要する労力を大幅に削減できる。本技術は、荒廃農地の放牧地としての再利用やかん木の侵入により生産性の低下した放牧地の整備に有効である。

  • キーワード : かん木防除、耕作放棄地、フレールモア、放牧地、木本除去
  • 担当 : 西日本農業研究センター・周年放牧研究領域・周年放牧グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 普及成果情報

背景・ねらい

荒廃農地の面積は2023年3月には25.3万haに及び、その解消は喫緊の課題である。荒廃農地における放牧飼養は荒廃農地の解消と有効活用策の1つとして注目されるが、家畜の生産性向上を図るには嗜好性の高いイネ科草本等の生産量を増大させる必要がある。そのため、荒廃農地に侵入し草本群落の生育を妨げるかん木は、人為的に除去することが求められる。しかし、荒廃農地に出現するかん木はその容積や重量が大きく、伐木と農地からの持ち出しには多大なコストがかかるという課題がある。
フレールモアによるかん木の破砕処理では残渣がチップ状で草本の再生長を妨げないため、荒廃農地からの枝葉の持ち出し作業が省略でき、荒廃農地の放牧地への転用や放牧地におけるかん木の管理作業を効率化できると考えられる。そこで、かん木の侵入した荒廃農地の整備におけるフレールモアの利用について、かん木の除去に要する作業時間や、処理可能な直径を明らかにし、本技術の普及に資する。

成果の内容・特徴

  • かん木の破砕に対応したフレールモアには様々なタイプ(乗用トラクタ装着型フレールモア、無線トラクタ装着型フレールモア、油圧ショベル装着型フレールモア、無線草刈機)が存在し、シュレッダー刃を装着した肩掛式刈払機も同様にかん木の破砕に利用できる。これらは、その能力に応じて、荒廃農地や放牧地の整備に活用可能である(図1)。
  • 高さ1.5m程度のかん木が優占した放牧地の整備(かん木の除去)における時間あたり作業可能な面積は、乗用トラクタ装着型フレールモアで最も大きく、従来法(刈払機による刈り払いと、刈り払った幹や枝葉の系外への持ち出し)と比べ120倍の効率化が可能である。次いで無線トラクタ装着型フレールモア、無線草刈機、油圧ショベル装着型フレールモアの順であり、最も小さいシュレッダー刃を装着した肩掛式刈払機でも従来法と比べ2倍以上の高速化が期待できる(図2)。
  • 根元まで除去可能な木本の最大根元直径は、乗用トラクタ装着型フレールモアで17.6cmと最も大きく、次いで無線トラクタ装着型フレールモア(10.6cm)、油圧ショベル装着型フレールモア(7.5cm)の順であり、根元直径の大きい木本の侵入状況により機種を選択することでより高い効率が得られる(表1)。
  • 上記2の時間あたり作業可能な面積は各機種の最大値に近い値であり、現地のきょう木(高木)の数、傾斜、オペレータの熟練度および障害物の多寡などの状況も影響して9%から59%まで減少する可能性がある。それらを考慮した機種選定を行うことにより、荒廃農地や荒廃放牧地の整備が可能となる(図3)。

普及のための参考情報

  • 普及対象 : 肥育もと牛生産者、公共牧場、普及指導機関。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : 中山間地域、離島地域の荒廃農地、荒廃放牧地。
  • その他 :
    • 「スマート放牧導入マニュアル-荒廃農地の再生による環境保全と生産性向上-(2024年版)」およびYoutube動画「【どうする!?荒廃農地】-最新フレールモアで放牧地に復活させてみた-」による普及活動を行う。
    • 牛の放牧利用のみでは徐々にかん木の再侵入が生じるため、初回だけでなく定期的な整備を実施することで、再び放牧地が荒廃することを省力的に防止できる。
    • 図1のフレールモア等の価格については、上記の「スマート放牧導入マニュアル」を参照願いたい。
    • 導入に際しては、農林水産省「農山漁村振興交付金(最適土地利用総合対策)」(交付額上限1,000万円)、「農地耕作条件改善事業」(中山間地域等で55%)等の補助事業が利用できる場合があるため(2025年1月現在)、各自で最寄りの市町村に相談のこと。

具体的データ

図1 かん木の破砕に対応したフレールモアおよびシュレッダー刃を装着した肩掛式刈払機,図2 フレールモア、シュレッダー刃を装着した肩掛式刈払機および従来法によるかん木の除去能力の比較,図3 実証地での作業効率に及ぼす傾斜および植生の影響,表1 乗用トラクタ装着型、無線トラクタ装着型および油圧ショベル装着型の各フレールモアにより除去可能な根元直径の比較

その他