要約
湛水条件下での窒素放出パターンは鶏ふん系肥料では温度の影響は小さいが、油かす類は低温で放出が遅延する。窒素無機化量の全窒素に対する割合は鶏ふん系肥料では製品ごとの差が大きいが、油かす類や魚かす系肥料では製品ごとの差は小さく、概ね60%以上である。
- キーワード : 湛水培養、有機質肥料、窒素無機化量、窒素無機化パターン
- 担当 : 西日本農業研究センター・中山間営農研究領域・地域営農グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
有機農業の耕地面積拡大において、国内で多くの面積を占める水稲作での拡大は必須である。有機水稲作では、雑草と病害虫への対策が十分であれば無肥料でもある程度の収量は期待できるが、収量増のためには有機質肥料の利用が有効である。有機質肥料では含まれる窒素全てが散布直後に作物にとって利用可能にはならず、利用可能な窒素量(窒素無機化量)、その放出パターン(窒素無機化パターン)は肥料ごとに異なる。そのため、水稲の生育に合わせた施肥をする場合、事前にそれらを把握しておく必要がある。そこで、本研究では多くの製品が流通している乾燥鶏ふん・発酵鶏ふん(鶏ふん系)、油かす等植物質、魚かす・魚かすと米ぬか等の混合肥料(魚かす系)について、湛水条件下での窒素無機化量を測定し種類ごとの傾向を把握したので、ここに提示する。
成果の内容・特徴
- 風乾土10g相当の土壌に有機質肥料約20mgを添加し、湛水条件、インキュベータ内15°C・22.5°C・30°Cでの鶏ふん系6点、油かす等植物質4点、魚かす系10点の20週までの培養窒素測定結果を元に有機質肥料の種類ごとの傾向を把握したものである。
- 鶏ふん系では、培養開始後2週間の間に窒素放出が起こった後、放出が見られないか、見られても微増というパターンを示す。培養開始後2週間の放出において低温での遅延はみられない。また、放出量自体は温度が低いと少なくなる傾向がみられる。(図1)。
- 油かす等植物質では、初期にシグモイド型の窒素放出パターンを示し、シグモイド型部分では低温による窒素放出の遅延がみられる。しかしながら、大豆加工品のように他と比較し温度の影響が小さいものが存在する(図2)。
- 魚かす系でも同様に初期にシグモイド型の窒素放出パターンを示し、シグモイド型部分では低温による窒素放出の遅延はみられるが、油かす類と比較すると影響は小さい。副資材としてフェザーミールや油かすが使用されている魚かす混合Fについては遅延が大きく、副資材の影響がうかがえるが、米ぬかが使用されている魚かす混合Cでは副資材の影響は小さい(図3)。
- 全窒素に対する窒素無機化量の割合は、鶏ふん系では27~80%と大きくばらつき、温度にかかわらず同程度の割合のもの、温度が高いと割合が増えるものがあり、製品ごとの違いが大きい。油かす等植物質においては、15°Cでのなたね油かす、大豆加工品でやや低いものの、概ね70%以上である。魚かす系においても低温で若干低いものの、30°Cでは68~84%であり、製品による差は少ない(表1)。
成果の活用面・留意点
- 本成果での湛水培養試験は、慣行法であるガラス容器を用いた手法では無く、R5年度成果情報「土壌等由来の窒素分析のための湛水培養にアルミ蒸着袋を利用するとガス抜きが不要になる」の手法で実施したものである。
- 有機質肥料の窒素無機化量・パターンには種類ごとの傾向はあるものの、それから逸脱する製品もあるため、それを考慮して有機質肥料を選択し活用する。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 農林水産省(農林水産研究の推進:有機農業推進のための深水管理による省力的な雑草抑制技術の開発)
- 研究期間 : 2022~2023年度
- 研究担当者 : 石岡厳
- 発表論文等 : 石岡(2024)土肥誌、95:384-390