要約
水稲有機栽培において防除困難な多年生雑草の塊茎を物理的に圧壊する技術であり、オモダカやクログワイを防除できる。試作した塊茎処理装置は、地表から3~5cmの塊茎を泥とともにコンベア部にかき上げ、装置後部に設けたローラによって圧壊した後に田面に排出し、死滅させる。
- キーワード : 水稲有機栽培、多年生雑草、塊茎、オモダカ、クログワイ
- 担当 : 西日本農業研究センター・中山間営農研究領域・生産環境・育種グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
「みどりの食料システム戦略」に示される有機農業の取組面積の拡大には、耕地面積の多くを占める水田での水稲有機栽培の拡大が不可欠であり、そのためには安定的な有機栽培技術の確立が必要である。水稲有機栽培において問題となる雑草防除については、多数回代かきや秋耕などの耕種的防除技術が有効とされるが、草種によっては十分な効果が得られない。また、物理的防除技術として表層撹拌などによる機械除草が普及段階であり、ノビエやコナギなどの一年生水田雑草に対しては一定の防除効果がある。しかし、クログワイやオモダカなどの塊茎を形成する多年生水田雑草は発生期間が長く、機械除草が可能な時期を過ぎた後でも出芽して旺盛に生育するため、その防除効果は限定的であり、効率的な物理的防除技術が必要とされている。
そこで、水稲有機栽培の継続により優占するおそれのある多年生雑草の塊茎を防除する技術を開発する。
成果の内容・特徴
- 本技術は、市販のイモ類掘取機をベースとした塊茎処理装置であり、ロータリ、バーコンベアおよびその下に敷設したパンチングメタル、2本のローラによって構成され、トラクタに直装して使用する(図1)。
- ロータリは、地表から深さ3~5cm程度に沈下した塊茎を泥とともにコンベア部にかき上げ、バーコンベアで搬送しつつパンチングメタルにより泥と塊茎を分離し、塊茎は残さや土塊とともに2本のローラによって圧壊された後に、田面に排出し死滅させる。
- オモダカおよびクログワイの塊茎の比重は真水(比重1.00)より重く、代かき後の泥水(比重1.28)よりも軽いため、代かきにより浮遊した後に沈降する(図2)。従って、本装置を用いた防除作業を荒代かきと本代かきの間に実施することで、代かきによって地表面近くに集まった塊茎を防除対象とすることができる。
- 本装置による防除効果(作業前後の塊茎埋没数の比較)は、現地のオモダカ多発圃場(広島県A町、17.9a)では約6割、場内のクログワイ多発圃場(島根県B市、2.5a)では約4割である(図3)。なお、現地と場内の作業速度はともに0.6km/h、作業能率は前者が1.7時間/10a、後者は3.6時間/10aである。
成果の活用面・留意点
- 水稲有機栽培で特に対策が難しい多年生雑草の効果的防除手段となることで、水稲有機栽培の安定化と取組面積の拡大に資する。
- 塊茎と形状が類似していることから、スクミリンゴガイの防除技術としての応用も期待できる。
- 本技術は試作段階であり、実用化に向けた研究開発が必要である。
- 石礫や刈り株残渣が多い圃場ではローラによる圧壊能が低下する場合がある。このため、石礫が多い圃場では代かき・耕起深に注意し、刈り株残渣が多い圃場は秋耕・春耕の際に丁寧に耕起する。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、農林水産省(農林水産研究の推進:有機農業推進のための深水管理による省力的な雑草抑制技術の開発)
- 研究期間 : 2021~2024年度
- 研究担当者 : 岡田俊輔、浅見秀則、伊達勇太、佐藤達也、小林英和、金田哲、国立卓生、髙橋宙之、長田健二、橘雅明
- 発表論文等 :
- 岡田ら「塊茎処理装置」特開2024-100705(2024年7月26日)
- 岡田ら、特願(2024年9月11日)