積雪によりブドウ根頭がんしゅ病菌の菌密度が高く維持される

要約

積雪地帯におけるブドウ根頭がんしゅ病発生の要因として、ブドウ樹が雪で覆われることにより、ブドウ樹の表皮やがんしゅ組織内部のブドウ根頭がんしゅ病菌の菌密度が高く維持されることが考えられる。

  • キーワード : ブドウ根頭がんしゅ病、ベイジアン・チェンジポイント・ディテクション
  • 担当 : 西日本農業研究センター・中山間営農研究領域・生産環境・育種グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

根頭がんしゅ病は世界中のブドウ生産地において、ブドウ樹に生育不良や枯死などの深刻な被害をもたらしている(図1)。これまで、凍害等によりブドウの樹に物理的な傷が付くことで本病が誘発されることが一般的に知られていた。またブドウ樹が雪で覆われると凍害を回避できることから、積雪地帯では本病の発生が少ないと考えられてきた。しかし近年、積雪地帯である北海道においても、作付け面積の増加に伴って本病の発生が顕在化してきており、ブドウ栽培上の大きな問題になっている。
そこで本研究では、雪に覆われたブドウ樹上における本病病原菌の生態を調査し、その結果を解析することにより、積雪地帯における本病の多発要因を解明する。

成果の内容・特徴

  • 北海道のブドウ生産圃場において、根頭がんしゅ病が発生しているブドウ樹のがんしゅ組織および表皮組織で病原菌の調査を継続的に行うと、どちらの組織からも高い密度で病原菌が検出される。病原菌密度の季節変動を明らかにするため、毎月の病原菌密度のデータに、気象庁のアメダスデータの当該月の気温、降水量、積雪高のデータを加えて、変化点を検出できるベイジアン・チェンジポイント・ディテクションを行うと、秋から冬にかけて病原菌の密度が増加しており、積雪のある冬の間は病原菌密度が高く維持されていることがわかる(図2)。
  • 同一のブドウ樹内で、雪に覆われている主幹の表皮と覆われていない主幹の表皮の両者で病原菌密度を比較すると、雪に覆われている部分は、覆われていない部分に比べて約100倍高い密度で病原菌が検出される(図3)。これらの結果より、雪に覆われることによって病原菌が高い病原菌密度が維持され、凍害等による大きな傷がなくても本病が発生しやすくなると考えられる。

成果の活用面・留意点

  • ベイジアン・チェンジポイント・ディテクションの結果(図2)は、1圃場の5樹からがんしゅ組織および表皮組織を月に1回採取・調査したデータを用いており、調査した3圃場のうち代表的な圃場のデータを示しているが、他の2圃場の結果も同じ傾向である。
  • 春には雪溶けと共に病原菌が土壌に流れて翌年の伝染源になる可能性も考えられる。今後は、病原の密度を低下させて感染を防ぐような防除技術の開発が望まれる。

具体的データ

その他

  • 予算区分 : 文部科学省(科研費)
  • 研究期間 : 2021~2023年度
  • 研究担当者 : 川口章、根本学、越智直、松下陽介、佐藤朋之(北海道大)、曾根輝雄(北海道大)
  • 発表論文等 : Kawaguchi et al. (2023) Front. Plant Sci. 14:1198710