要約
イチゴ促成栽培において、育苗が省力的なトレイ苗を3日間冷蔵処理することにより、頂花房の出蕾・開花時期を早めることができる。最も花芽分化誘導効果が得られる冷蔵処理開始時期は、品種・栽培地によって異なるが自然条件での花芽分化時期の1週間前頃が適する。
- キーワード : イチゴ、促成栽培、短期間冷蔵処理、花芽分化誘導、トレイ苗
- 担当 : 西日本農業研究センター・中山間畑作園芸研究領域・施設園芸グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
気候変動による8月下旬~9月下旬の高温化によって、自然条件下で花芽を分化させる促成作型では、花芽分化が遅れることで定植時期も遅くなり、単価の高い早期収量が不安定化することが問題となっている。一方、低コストなイチゴの花芽分化誘導処理方法として開発された間欠冷蔵処理は、果実予冷庫を利用して苗を低温処理して花芽分化誘導するが、予冷庫に入る苗数に限りがあり規模の大きな生産者ではすべての苗を処理することができない。これらのことから、低コストで省力的な新たな花芽分化誘導処理技術の開発が求められている。
そこで、本研究では育苗が省力的なトレイ苗を用いて、花芽分化特性の異なる複数品種の苗に短期間の冷蔵処理を実施して花芽分化を促進する処理方法・処理条件を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 短期間冷蔵処理は、果実予冷庫を活用してイチゴ苗に3日間の冷蔵処理(13~15°C、暗黒条件)を行うものである。
- 花芽分化特性の異なる3品種「さぬき姫」、「ゆめのか」、「さちのか」における短期間冷蔵処理による花芽分化誘導効果は、いずれの品種においても無処理に対して出蕾時期が早まる効果が得られる(表1、表2)。
- 3日間の冷蔵処理の開始時期と出蕾時期の関係から、品種によって花芽分化誘導効果が最も得られる冷蔵開始時期は異なり、各品種の栽培地における自然条件下での花芽分化時期の1週間前頃であると考えられる(表1、表2、図2)。
成果の活用面・留意点
- 2020年~2022年に香川県善通寺市において試験を実施した。6月下旬に採苗し、トレイ24穴(培地容量175mL)に挿し苗し、育苗した苗を用いた結果である。なお、試験地における2022年8、9月の平均気温は平年より約1°C高かった。
- 間欠冷蔵処理を終えた後に空いた果実予冷庫を利用して実施する。間欠冷蔵処理を実施する場合と同様に、苗の肥培管理を行い、苗の果実予冷庫への入出庫は正午頃に実施する。
- 供試品種の自然条件下での花芽分化時期は、「さぬき姫」<「ゆめのか」<「さちのか」の順に早い。
- 8月下旬~9月下旬の気温が例年より高温である年は、自然条件下での花芽分化時期も遅れるため、花芽分化誘導効果が得られる冷蔵処理開始時期も遅れる可能性がある。冷蔵処理の開始が適正な時期より早すぎたり遅すぎたりした場合においても、出蕾開花の時期は無処理で同日に定植した株と同様となり、冷蔵処理によって大幅に遅れることはない。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金
- 研究期間 : 2020~2024年度
- 研究担当者 : 矢野孝喜、山中良祐、遠藤みのり、吉田裕一(岡山大)
- 発表論文等 : 矢野ら(2024)園芸学研究、23:271-278