要約
無線探索機を活用することで、親子放牧における子牛を複雑な地形の放牧地においても容易に探索できる。さらに、開発した首輪装着用防水収納ケースを活用することで子牛に装着した無線探索機は常時子牛の首上部に安定的に配置され、牛体に遮蔽されずに無線通信が可能となる。
- キーワード : 無線探索機、子牛探索、牛首輪、放牧地、3Dプリンター
- 担当 : 西日本農業研究センター・周年放牧研究領域・周年放牧グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
繁殖牛(母牛)と一緒に放牧する親子放牧では、子牛の生後数週間の時期に、母牛が子牛を群れから離れた位置に隠す習性があるため、しばしば子牛の所在把握が困難となり、牧場管理者はその確認のために多大な時間と労力を要する。放牧牛の位置を追跡するための機器としてはGPS首輪が利用できるが、その機器重量が子牛には適していないため、子牛への適用が難しいという課題がある。一方、近年、山岳救助用の無線探索機がレンタルサービスとして利用可能となっており、その派生として、ペット探索用としてのサービスも始まっている。本研究では、この無線探索機が中山間地域の複雑な地形の放牧地において、子牛の探索に有効であるか否かを評価する。さらに、子機を放牧牛に長期間装着する際に不可欠な防水機能と、無線通信電波を牛体に遮蔽されない高い位置(首上部)に配置できる構造を持った首輪装置を開発する。
成果の内容・特徴
- 無線探索機は、子牛に装着する発信機(子機)と管理者が持つ受信機(親機)を組み合わせて用いる。子牛を探す場合、管理者は子機から発信される電波を親機が受信し、親機から子牛のいる方向と距離を検知することで、探索が容易になる。発信機はそれぞれの子牛に装着し、受信機1台で多数の発信機に対応できるため、牧場で1台の受信機があれば運用可能である。
- 4.8~5.1haの4つの中山間地域の放牧地において、機器の有無で子牛の探索時間と探索距離を比較すると、機器なしの探索では、発見まで平均1,217mの移動で20分の時間がかかる。一方、機器ありの探索では、平均320mの移動で6分の時間で発見可能である(図1、図2)。無線探索機を利用することで、探索者の移動距離と探索時間が有意に短縮される。無線探索機による検出範囲は、障害物等が無い場合、1000mである。
- 子機を首上部に安定的に配置できる防水機能付きの首輪用収納ケースは、3Dプリンターで自作可能である(特許出願)。収納ケースの台座部分がカーブの形状で、ベルトと一体化した構造であり、かつ首輪下部の重り(118g)の作用により、首上部からずれた場合は自然に首上部へ復帰する(図3、図4)。子機、首輪用収納ケース、重りを含む首輪の総重量は208gである。
- 本機器は子牛のみではなく放牧成牛にも活用できる。収納ケースは市販の首輪に対応して作成でき、ベルトを通す台座部分のカーブの幅を広くすれば成牛用首輪にも活用できる。
成果の活用面・留意点
- 全国の放牧飼養を行う事業者や地方公共団体・農協など公共牧場の運営機関で活用可能である。
- 用いた機器は、AUTHENTIC JAPAN株式会社のCOCOSIPPO(ココシッポ)のレンタルサービス品である。レンタルサービスとして唯一利用できる無線探索機で、受信機と発信機1セットの月額利用料金は、1,078円である(2025年1月現在)。受信機のみの追加料金は880円、発信機のみの追加料金は550円である。
- これまでの試験事例では、放牧地の雑灌木に発信機が引っかかり損傷した例等はないが、雑灌木が多い場合、首輪としてプラスチック留め具の作業ベルトが推奨される。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、農林水産省(スマート農業技術の開発・実証・実装プロジェクト)
- 研究期間 : 2023~2024年度
- 研究担当者 : 胡日査、柿原秀俊、渡辺也恭、堤道生、平野清
- 発表論文等 :
- Huricha et al. (2025) Rangel. Ecol. Manag. 98:118-124
- 胡ら、特願(2024年7月11日)