要約
地中では紙などが一旦濡れると、濡れた状態が維持される。この現象を利用し、最高地下水位計測器は、測器を地中に設置してから取り出すまでの期間の最高地下水位を紙が濡れた痕跡から測定する。圃場の最高地下水位を安価で簡便に測定でき、園芸作物や畑作物の適地判定等に活用できる。
- キーワード : 最高地下水位、測器、適地判定
- 担当 : 西日本農業研究センター・研究推進部・技術適用研究チーム
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
圃場の地下水位が高いと、農作物の生育や品質に悪影響が出る。地下水位、特に最高地下水位を把握することは、農作物の適地判定や栽培管理に重要である。しかし、最高地下水位を低コストで簡便に測定する方法は無く、測定には高額な水位センサーを必要とする。そこで、ホームセンターや通販サイトで購入できる資材で自作でき、低コストで簡便に最高地下水位を測定する測器を開発する。
成果の内容・特徴
- 最高地下水位計測器は、保護管と計測部によって構成される(図1左)。保護管は、地下水位を測定する穴(観測孔)が崩れるのを防ぐ。計測部は栓、支持棒、記録紙から構成される。記録紙は地下水に浸かると濡れ、色合いが変化する。地中では濡れた状態が維持されるため、栓の下端(地表面に位置)から濡れた記録紙までの距離を測ることで、設置期間中の最高地下水位が求まる(図1右)。
- 保護管は塩ビ管(VP13)にドリルでφ8mm程度の穴を10cm間隔であけて作製する。計測部は、農業用の支柱であるグラスファイバー製のポール(直径5.5mm)を支持棒とし、長さは塩ビ管と同じとする。この支持棒に紙ウエス(茶)を記録紙として等間隔に貼りつける。記録紙の幅を2.0cm、記録紙間の隙間を0.5cmとして計測部を作製した場合、最高地下水位は2.5cm間隔で測定できる。記録紙にはキッチンペーパー(茶)や新聞紙でも代用できる。濡れた記録紙は乾かすことで再利用できる。観測孔の深さと最高地下水位計測器の長さは、地下水位の深さや作物の根域を考慮して決定する。100cmの最高地下水位計測器を作製する材料費は約500円であり、自作可能である。
- 水溜りができない場所(畝等)に観測孔を掘り(図2A)、観測孔に最高地下水位計測器を設置すれば測定が開始される(図2B、C)。設置直後に計測部を取り出し、現在の水位を測定する。一雨毎もしくは定期的(最長1カ月毎)に計測部を取り出し、メジャーを使って最高地下水位を測定する(図2D、E)。測定後、記録紙を乾かし、保護管に計測部を再挿入し、現在の水位を測定するとともに、最高地下水位の測定を再開する。交換用の計測部を用意しておくと、記録紙が乾くのを待つことなく、観測を再開できる。
- 2カ月間、同一圃場の近接した地点において、最高地下水位計測器で測定した最高地下水位と市販の水位計を設置して地下水位の経時変化を測定した結果を示す(図3)。さらに、最高地下水位計測器と市販の水位計それぞれで1週間毎に測定した最高地下水位の値を比較した結果(図4)から、最高地下水位計測器は市販の水位計と最高地下水位の測定において同程度の実用性があると判断される。
成果の活用面・留意点
- 圃場や園地の最高地下水位を簡単に測定でき、適地・不適地判定や栽培管理の判断材料になる。例えば、シールディング・マルチ栽培(NARO S.マルチ)の導入予定園地で最高地下水位が-40cmに達しなければ、NARO S.マルチの効果が発揮できる園地と判断される。
- 最高地下水位計測器では最高地下水位が出現した時刻は判定できない。また、図3の12月4日に測定した最高地下水位のように、雨が降らなかったり、降水量が少なかった期間は、前回設置時の地下水位(図中の×)が最高地下水位となる場合がある。
- 地下水位のバラツキを考慮し、圃場一筆につき最高地下水位計測器を3本程度設置し、測定するのが望ましい。
- ナメクジの粘液が記録紙に付くと濡れた痕跡が判別しにくくなる。虫が保護管内部に侵入するのを防ぐため、保護管最下部の穴とドリルであけた穴は網戸のアミ等(網目のサイズ#16程度、大きめの網目)でカバーすることを推奨する。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金
- 研究期間 : 2021~2024年度
- 研究担当者 : 黒瀬義孝、竹内真里、志村もと子
- 発表論文等 : 黒瀬、竹内、特願 (2024年9 月19日)