要約
植物上に残存する環境DNAをメタバーコーディング解析することで、天敵を含む節足動物を簡易かつ網羅的に検出する天敵検出法を開発した。本法により、植物上を訪れた土着天敵を含む節足動物を簡易に判別することが可能となり、害虫密度管理に利用できる。
- キーワード : 環境DNA、天敵温存植物、土着天敵、ハイスループットスクリーニング
- 担当 : 西日本農業研究センター・中山間営農研究領域・生産環境・育種グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
農作物栽培において、土着天敵を利用した害虫抑制技術を開発するには、農作物に加えて周辺植生や天敵温存植物等に来訪する土着天敵の種構成を明らかにする必要がある。しかし、従来のたたき落とし法では膨大な時間と労力を要しながら、微小な種や夜行性の種を取り逃すことがある。そこで、植物上に残存する環境DNAから、土着天敵を含む節足動物相を簡易かつ網羅的に判別する技術を開発する。
成果の内容・特徴
- これまでも環境DNAを用いた節足動物の解析はなされているが、現地で対象植物に水をかけ流して環境DNAを収集しており大量に調査することが難しかった。本方法では目的とする植物部位のみを採取して実験室にて少量の水で洗浄して環境DNAを収集するため、大量のサンプルを簡易かつ省力的に処理できる。
- 対象植物から環境DNAを抽出する手順を図1に示す。採集した植物部位をチャック付きビニル袋の中で精製水を用いて洗浄し、その洗浄水を滅菌ろ過フィルターでろ過してフィルター上に環境DNAを収集する。収集した環境DNAを節足動物に特異的なプライマーセット用いてメタバーコーディングして同定する。
- 天敵温存植物として知られる各種植物の花上の環境DNAを本方法により解析することで、各種節足動物の残存DNAを種単位で網羅的に検出できる(表1)。
- 本方法を使用してムラサキツメクサ、スイートアリッサム、バーベナを解析した事例では、それぞれから土着天敵(タバコカスミカメ、ヒメカメノコテントウ、ナミヒメハナカメムシ、マガリモンヒラタアブ、フタホシヒラタアブ等)が検出される(表1)。
- 目視による調査に比べ短時間に多数の植物を調査することができ、天敵温存植物として有効な植物種上に発生している土着天敵を含む節足動物相を簡易かつ網羅的にハイスループットスクリーニングが可能になる(表1)。
成果の活用面・留意点
- 環境DNA天敵検出法は、従来の方法で収集された定量的データを補完する定性データであり、特に天敵温存植物の花に生息する土着天敵の種に関するデータを収集するために使用できる。
- 本手法はムラサキツメクサ、スイートアリッサム、バーベナを用いて開発したものであり、他の植物種については、操作法を検討する必要がある。
- スイートアリッサムおよびバーベナの花は1回の洗浄で節足動物のDNAを検出できたが、小花が密集するムラサキツメクサでは1回目の洗浄でDNAを検出できず、2回目の洗浄で検出されたため、確実に環境DNAを抽出するためには少なくとも2回以上の洗浄が必要である(図2)。
- 本方法により検出できる節足動物はデータベース上に登録のあるものに限られるため、より高精度にスクリーニングするためには土着天敵等のDNAライブラリーの充実が必要である。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金
- 研究期間 : 2023~2024年度
- 研究担当者 : Wari David、楠本良延、北村登史雄
- 発表論文等 : Wari D. et al. (2025) MethodsX 14:103329