重点普及成果

従来1/10以下の作図時間で直感的に操作できるほ場の3次元モデル自動生成ソフトウエア

本技術開発の背景

ほ場整備事業では、事業者が建設予定の農道や水路、ほ場区画の位置に杭や板などを設置し、これらを目印として、平面図を照らし合わせながら、地権者に現地説明を行っている。しかし、この方法では建設後の完成イメージを頭の中で想像する必要があり、地権者によって完成イメージが計画と違っていたり、正確にイメージができなかったりする。その結果、工事が一定程度進んでから、地権者から水路位置や法面形状などの仕様変更が求められ、工期が延びて工事費用が嵩んだり、営農開始時期が遅れたりする。

こうした課題に対応するため、ほ場の完成イメージを3Dモデルにして地元に説明する試みが行われている。3D化することでイメージの食い違いが解消され、設計変更回数の軽減などの効果が得られている。一方、ほ場整備事業の半数近くを担う中小企業等の組織にとって、3Dモデルの作成は専門的な知識が必要で、かつ、膨大な作図時間を要している。そこで、こうした高い障壁を解消するため、中小企業などが簡単に扱えるほ場の3Dモデルの自動生成ソフトウェア(以下、本ソフトと呼ぶ)を開発する。本ソフトは専門的な知識を有しない技術者がほ場整備地区をモデル化した場合、従来手法の1/10以下の作業時間で高精度な3Dモデルを生成することができる。また中程度のクラスのノートPC(推奨16GB)でもストレスなく動作できるため、地元での説明に気軽に利用できる。

技術概要

  • 本ソフトは、高精度なほ場の3次元モデルを自動生成するためのソフトウェアである。従来の2次元CAD汎用ソフトウェアを利用して、標高値(文字情報)を含む構造物の骨格線データを作図する。そのデータを本ソフトに読込ませることで、瞬時に「ほ場」、「用排水路」、「農道」等を自動的に3次元モデルに変換することができる。
  • 「道路(交差点を含む)」、「用排水路」、「ほ場(畦畔を含む)」、「ほ場進入路」の各種構造物はパラメトリックモデリング手法によって生成され、形状パラメタによって3Dモデルを制御することができる。ユーザーは形状パラメタを変更することで、幅、高さ、法面勾配、隅切りなどを自在に編集が可能である。例えば、概要図に示すように道路幅員の形状パラメタを変更することで、細かい作図をすることなく、瞬間的に3次元モデルに反映することが出来る。
  • ほ場と道路などの構造物間に存在する法面や地盤面は、独自開発したアルゴリズムにより、構造物同士の位置関係の情報をもとに適切な3Dモデルを自動的に生成することができる。また、設計者の意図に応じてモデル生成後も手動で変更することが可能である。
  • 国土交通省が定める3次元設計データ交換標準LandXML形式のデータ出力が可能である。出力された各種構造物を構成する3Dモデルは、工種毎にレイヤー分割されているため、ユーザーの用途に応じて3Dモデルを切り出して使用することが出来る。
  • ※LandXML:土木分野における設計・測量データのオープンなデータ標準を目指したXMLフォーマット。
  • ※形状パラメタ:道路やほ場等の幅、高さ、法面勾配などの形状であり、ユーザーが数値を入力することによって自在に形状の編集を可能にするものである。
    なお、本ソフトウェアを1ヶ月間無料でご体験いただけます。ソフトウェア本体、各種マニュアル、サンプルデータを含みます。お気軽にお問い合わせください。
形状パラメタによる道路の3Dモデル変更例の概要図

技術に関する問い合わせ先

農研機構 農村工学部門 研究推進部 研究推進室
Tel:(029)-838-7677

参考情報

普及成果情報