装軌式農業用車両の高速化技術

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要約

2ポンプ・2モータの改良油圧駆動系、芯金レスクローラ、芯金突起をゴムで覆ったクローラ、これらのクローラを駆動する駆動輪などにより、低振動、低騒音で、クローラトラクタ等の装軌式農業用車両を25km/h程度まで高速走行を可能にした技術。

  • 担当:生研機構・生産システム研究部・土壌管理システム研究
  • 担当:生研機構・生産システム研究部・収穫システム研究
  • 連絡先:048-654-7068
  • 部会名:作業技術
  • 専門:機械
  • 対象:農業機械
  • 分類:研究

背景・ねらい

装軌式農業用車両には、芯金(金属製の部品)を埋設したゴムクローラが使われており、この芯金に駆動輪を引掛け、金属同士を接触させて駆動することなどから、高速走行時に振動や騒音が高まる問題がある。また、高速走行時には、より高い直進性と旋回性が必要となる。そのため、国産の現行装軌式農業用車両の最高速度は10~15km/h程度と車輪式大形トラクタの半分以下であるが、これらの車両においても作業受委託の増加等を背景に、より高速でほ場間を移動したいという要望が高まりつつある。そこで、装軌式農業用車両の高速化技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • 本技術は、12ポンプ・2モータ式油圧駆動系のポンプ及びモータの容量増大、左右バランス向上、設定圧力の増大、操舵系リンクの遊び減少などにより、直進性や操舵性を維持しつつ、装軌式農業用車両の走行速度を25km/h程度まで高速化するとともに、2芯金がなく、内面中心にゴム突起を持つ芯金レスクローラと専用駆動輪(図1-a)、又は、3芯金を有し、内面中心の芯金突起をゴムで覆ったハイブリッドクローラと専用駆動輪(図1-b)の採用により、高速走行時の振動・騒音を低減させるものである。
  • 機関出力70kWのクローラトラクタを対象に開発した技術の特徴を以下に示す。
    1走行速度25km/hで、安定した直進・操舵が可能である。
    2現行クローラに比べ、高速域における振動・騒音が少ない(図2)。
    3走行動力が、現行クローラに比べ、7%程度低い(図3)。
    4芯金レスクローラは、現行クローラと同等のけん引性能を有する(ハイブリッドクローラでは、振動を減らすためラグとラグの中間に芯金を設けたこと、クローラ剛性を下げるためバイアスコードを省いたことによりけん引性能が劣った)(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 装軌式農業用車両を高速化させる場合の素材技術として活用できる。
  • 走行速度の増大に伴い走行動力が増大するので、適切な機関を搭載する必要がある。
  • ハイブリッドクローラについては、芯金やバイアスコードの仕様を現行クローラと同等にしてけん引性能を確認する必要がある。

具体的データ

図1:開発したクローラとその駆動輪
図1:開発したクローラとその駆動輪

 

図2:シャーシ振動(左)と周囲騒音(右)(コンクリート路面走行時)
図2:シャーシ振動(左)と周囲騒音(右)(コンクリート路面走行時)

 

図3:走行動力(コンクリート路面走行時)
図3:走行動力(コンクリート路面走行時)

 

図4:けん引性能(SiC水田)
図4:けん引性能(SiC水田)

 

その他

  • 研究課題名:装軌式農業用車両の高速化技術の開発
  • 予算区分 :経常・緊プロ(委託)
  • 研究期間 :平成10年度(平成8~9年)