田面水を利用する液剤少量散布機

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要約

調剤作業の省力化と散布作業の高能率化を図るため、作業中に田面水を吸い上げ、液剤の希釈水として利用する方式の散布装置を装着した水田用栽培管理ビークル等に搭載する液剤少量散布機。

  • 担当:生研機構・生産システム研究部・生育管理システム研究
  • 担当:生研機構・生産システム研究部・土壌管理システム研究
  • 連絡先:048-654-7074
  • 部会名:作業技術
  • 専門:機械
  • 対象:農業機械、稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

水田用栽培管理ビークル等に搭載する方式の液剤少量散布機において、調剤作業の省力化と散布作業の高能率化を図ることを目的として、散布作業中に田面から吸上げた水を液剤の希釈水として利用する方式の液剤少量散布機を開発する。

成果の内容・特徴

  • 散布機の機体前方中央部で、田面に接地した吸水部から水を吸い上げ、清水タンクに供給する田面水吸水装置(図1)と、噴霧ポンプにより清水が圧送される管路(最高圧力1.0 MPa)の途中で液剤を所定の希釈濃度に注入・混合する液剤注入・混合装置( 図2)を開発し、それらの装置を、液剤少量散布機(ノズル噴霧量が作業速度に連動して増減する機構により、液剤の300または500倍希釈液を、速度にかかわらず、常に散布量25L/10aで散布 できる)に装着した(図1、表)。
  • 田面水吸水装置は、水深5~7cmの立毛中の水田内を、速度0.5~0.9 m/sの範囲で安定した吸水を確保でき、ノズル噴霧量の約2~4倍の吸水を可能にする(図3)。また、液剤注入・混合装置は、設定作業速度0.4~0.9 m/sの範囲で円滑に作動し、農薬( 試験では模擬農薬として蛍光顔料を使用)を300及び500倍希釈とも、目標値の±7%程度の精度で注入できる(図3)。
  • この散布機では、薬液補給及び調剤作業が不要となるため、省力化、高能率化が図られる。また、作業後の残液がないため、従来に比べて、薬剤の節約が可能となり、環境への負荷低減にも貢献できる。タンク容量をこれまでよりも小さくできるため、作業機の軽量化が図られることから、水田内の走行性が改善される。

成果の活用面・留意点

  • 水田用液剤少量散布機の高性能化、高機能化のための技術として活用する。
  • 実用化のためには、装置の簡易化、軽量化等により、低価格化を図る必要がある。また、作業能率の向上や省力性などを実証的に確認する必要がある。

具体的データ

図1:田面水利用液剤少量散布機(概略図)
図1:田面水利用液剤少量散布機(概略図)

 

図2:液剤注入・混合装置(概略図)
図2:液剤注入・混合装置(概略図)

 

図3:ノズル噴霧量、田面水吸水量及び液剤注入量と作業速度の関係
図3:ノズル噴霧量、田面水吸水量及び液剤注入量と作業速度の関係

 

その他

  • 研究課題名:水田用栽培管理ビークルの汎用性拡大に関する研究
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成10年度(平成7~10年)