エゾノギシギシ自動検出型スポットスプレーヤ

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要約

草地内に点在するエゾノギシギシを自動検出し、除草剤をスポット散布するトラクタけん引式の雑草防除用作業機を開発した。作業幅1mで、速度0.75m/sにおいて検出率約80%での薬液のスポット散布作業が可能である。

  • 担当:生研機構・畜産工学研究部・飼料生産工学研究
  • 連絡先:048-654-7094
  • 部会名:生産管理
  • 専門:機械
  • 対象:農業機械・牧草類
  • 分類:研 究

背景・ねらい

草地の強害雑草の一つであるエゾノギシギシは、粗飼料の低質化を招くものとして古くから問題視されており 、今日まで多くの抑圧方法等が検討されてきた。そ の中で最も省力的な方法は除草剤の全面散布法であるが、環境面での問題も指摘されている。環境負荷の小さ い、効率的な防除法の確立を目的に、草地内に点在 するエゾノギシギシを自動的に検出し除草剤のスポット散布が可能な作業機を開発する。

成果の内容・特徴

  • 本機はエゾノギシギシ検出部とコントローラおよび散布装置(動力噴霧機、薬剤タンク、噴霧ノズル)を 台車に搭載して構成し、トラクタでけん引して作業する (図1) 。
  • 検出部は5組の測定ヘッドを進行方向に向かって直角に20cm間隔でフレームに固定している (図2) 。 各測定ヘッドは光源(ハロゲンランプ)を内蔵しており、光源からスポット光(スポット径約2cm)を地表に 照射する。さらに、各測定ヘッドに組み込んだ超 音波式変位測定装置で測定対象物までの距離を測定し、反射光のうち波長550、670、780nmの光を選出して距離 に応じた反射率と780nmの反射率 の持続時間とを求め、予め設定した閾値をもとにエゾノギシギシと他の牧草等とを識別する (図3) 。
  • 各測定ヘッドにそれぞれ対応して電磁バルブとノズルが取り付けられており、エゾノギシギシを検出 したヘッドに対応した電磁バルブを走行速度に見合った分だけ時間遅れ を持たせて開き、薬液をスポット散 布する。
  • 草地管理状況等により対象物の反射率が異なるが、圃場毎にサンプルを採取して各反射率の閾値を予 め設定するか、閾値を固定して作業時期 を選ぶ(最終草刈取1~2週間後)ことにより高精度作業が可能で、所内での試験の結果、0.75m/sの作業速 度で約80%のエゾノギシギシの検出率が得 られた。また、除草剤の付着状況から、検出性能に応 じたスポット散布性能が確認できた。なお、走行速度 が増すにつれて、誤検出率が増える傾向が見られた が、その値は速度0.75m/sの時でも約10%であった (表) 。

成果の活用面・留意点

  • 草地内に点在するエゾノギシギシの省力的なスポット防除作業に活用できる。
  • 高精度作業を行うためには、作業時期の選定等が必要である。なお、クローバが密生 した草地では 、誤検出率高くなる危険性がある。

具体的データ

図1 開発期の概要

図2 測定ヘッドの取り付け状況

図3 本機における薬剤散布までの流れ

表 圃場試験結果例

その他

  • 研究課題名:永年草地用除草ロボットの開発
  • 予算区分 :経常・緊プロ(共同)
  • 研究期間 :平成10年度(平成5~9年)
  • 研究担当者:山名伸樹、志藤博克、亀井雅浩(現:中国農試)、八木茂、石束宣明(現:四国農試)、諏澤健三、(株)タカキタ
  • 発表論文等:成9年度生研機構研究報告会資料、17、1998
                      永年草地用自動除草機の開発(第4報)、農機学会第56回年次大会講要、95~96、1997 他
                      永年草地用除草ロボット、畜産の研究53(1)、119-123、1999