回行式の傾斜地果樹用多目的モノレール

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要約

傾斜上下方向に設置した本線軌条に、等高線方向に園内くまなく配置したS字状の軌条を組合わせて、薬液散布や運搬等の作業を行うことのできる多目的モノレールである。薬液散布作業は無人で25a/h以上の能率で行うことができる。園内の収穫物運搬作業も能率的に行うことができ、重作業の時間が大幅に短縮される。

  • キーワード:果樹、モノレール、無人薬液散布、運搬、肥料散布、
  • 担当:生研機構・園芸工学研究部・果樹生産工学研究
  • 連絡先:電話048-654-7084
  • 区分:共通基盤・作業技術、果樹・栽培
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

カンキツ園をはじめとする急傾斜地果樹園では、大部分の作業を人力に頼っている。急傾斜地で動力噴霧機から園内にホースを延ばしての人力による薬液散布作業は重労働である。また、収穫物や農業資材の運搬は、傾斜上下方向に設置されたモノレールが利用されているものの、等高線方向の運搬は一輪車程度しか使えず、能率が低く労働負担の大きい作業になっている。そこで、傾斜地果樹園での薬液散布作業、収穫物や資材の運搬作業等の省力化と軽作業化を図るため、回行式の傾斜地果樹用多目的モノレールを開発する。

成果の内容・特徴

  • 等高線方向のS字軌条と上下方向の本線軌条で構成される。S字軌条は、曲率半径3.5m程度に曲げ加工ができる。低コスト化を図るため、上下面をスリット加工した50×50mmの角パイプである(表1)。なお、S字軌条は樹列2~3列毎に設置する。
  • S字軌条では、S字軌条けん引車が薬液散布車、運搬車等の作業機をけん引して作業を行う。薬液の補給や収穫物等の移動を、本線軌条との近接点で行う。なお、各作業機は引込み線を設けた場所に格納しておき、ポイントを切り替えて作業機のS字軌条への入れ替えを行う。S字軌条けん引車は、ウレタンローラ式駆動輪である。
  • 本線軌条には、本線けん引車、本線タンク車、本線運搬車があり、S字軌条への薬液補給や収穫物の本線軌条末端への運搬等を行う。薬液の補給は、本線軌条に沿って設置した配管を介して、本線軌条端部のタンクからもできる。
  • 薬液散布車は、エンジン、ポンプ、送風機、噴頭等からなり、噴頭は電動モータで左右に回動する。薬液散布は片側方向に散布を行うので、1往復で軌条の両側に散布する。薬液散布作業及び噴頭の方向制御は無人で行う(図1)。散布量370~410L/10aの時の作業能率は26~27a/hである。本装置は、スプリンクラと比較して、薬液散布量を節減しても薬液付着は良好である(表2)。
  • S字軌条を走行する運搬車の積載量は200kgである。収穫箱の等高線方向の運搬作業能率は、64箱/h・人であり、手運搬に比べ2.5倍となり、重作業の時間が大幅に短縮される(図2)。
  • 肥料散布車により化成肥料を120kg/10a散布した時の作業能率は27a/hである。施肥量は化成肥料で30~150kg/10a、有機肥料で50~150kg/10aであり、散布幅は3~6mである。

成果の活用面・留意点

  • 平成15年に実用化の予定である
  • S字軌条の運搬車にセット動噴とタンクを積載しての除草剤散布や、粉砕機を積載してせん定枝処理が行える。
  • 最大傾斜30 ゚以下の果樹園に設置可能である。
  • 薬液散布性能を確保するためにS字軌条の設置間隔は8m以内とする。

具体的データ

表1.主要諸元

図1.軌条の配置と薬液散布作業の状況

表2.薬液付着試験結果

図2.収穫箱の運搬作業

その他

  • 研究課題名:傾斜地果樹用多目的モノレールの開発
  • 予算区分:経常・21緊プロ(委託)(評価)
  • 研究期間:1998~2002年度
  • 研究担当者:金光幹雄、奥村隆志、長木 司、小川幹雄、久保田太郎、横田昇平、(株)ニッカリ、(株)共立
  • 発表論文等:1)特許出願中(特願2000-313695、特願2000-313696、特願2000-313697)