果樹用局所施肥機
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要約
本機は、硬度が高く石れきを含む果樹園の土壌に適応可能で、約70cmの間隔で幅7cm、長さ25cm、深さ20cm程度の穴を掘削し、同時に土壌中に肥料を施用したあと覆土することができる施肥作業機である。わい化リンゴ園で施肥量が85kg/10a時の作業能率は10a/h程度である。土壌の物理性を改善することによって細根の発生も促進できる。
- キーワード:果樹、施肥、土壌掘削、コイル刃
- 担当:生研機構・園芸工学研究部・果樹生産工学研究
- 連絡先:電話048-654-7084
- 区分:共通基盤・作業技術、果樹・栽培
- 分類:技術・普及
背景・ねらい
果樹栽培における施肥作業は、ブロードキャスタなどを利用した地表面への全面散布が一般的である。しかし、資材の有効利用や環境保全の観点から、土壌中に施用することが望ましいとされているほか、リン酸肥料は土壌中の移動が少ないため土壌中に施用する必要がある。さらに、高品質生産や長期にわたる施肥効果が期待される被覆肥料を利用するためには、土壌中に施用する必要がある。そこで、果樹園の土壌中に粒状肥料や有機質資材等を施用する作業機を開発する。
成果の内容・特徴
- 開発した果樹用局所施肥機は歩行型履帯式で、走行部、施肥ユニット、肥料ホッパ、肥料分配部からなる(図1)。
- 肥料ホッパは容量60Lで、回転式撹拌装置、シャッタ式調量装置を備える。ホッパから排出された肥料は、公転軸に備えた肥料分配部で、4組の施肥パイプに順次供給され、施肥ユニットに送られる。肥料繰出し量はシャッタの開度調節で0.2~2kg/minの範囲で調節可能である。
- 施肥ユニットは、2本のコイル刃と肥料排出スクリュを内蔵した施肥パイプからなり、公転軸を中心に90度間隔で4組配置した。各ユニットは、機械的な動力伝達機構によって自転し、本機の走行に伴って進行方向に公転する。本装置により、約70cmの間隔で、幅7cm、長さ25cm、深さ20cm程度の穴を掘削し、土壌中に肥料を混和できるほか、コイル刃により耕起することができる(図2)。
- 作業能率は、わい化リンゴ園(樹列間5m)で作業速度0.15m/sで粒状肥料を85kg/10a施用した場合に10a/h、ニホンナシ園(樹列間3.8m)で作業速度0.07m/sで粒状肥料を144kg/10aを施用した場合3.8a/h、0.21m/sで68kg/10a施用した場合7.2a/hである。
- わい化リンゴ園での局所施肥は、慣行と比べ施肥量を半減しても、生育状態、収量、果実品質とも同等となり、施肥量軽減によるコスト低減の可能性がある(表1)。
- ニホンナシ園での局所施肥は、施肥部分で0.5mm以下の細根が大量に発生し、増収の可能性がある(表2)。
成果の活用面・留意点
- 平成15年に実用化の予定である。
- 施肥量を多くする場合(150kg/10a以上)は、2回作業が必要である。
- 雑草が繁茂しているとコイル刃に絡むので、除草しておく必要がある。
具体的データ




その他
- 研究課題名:果樹用局所施肥機の開発
- 予算区分:経常・21緊プロ(委託)(評価)
- 研究期間:1998~2002年度
- 研究担当者:金光幹雄、奥村隆志、長木 司、小川幹雄、久保田太郎、横田昇平、(株)ササキコーポレーション
- 発表論文等:1)特許出願(特開2001-61318)