穀物循環型紫外線照射装置による小麦表面付着菌の殺菌

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要約

小麦を循環させながら紫外線を照射することにより、品質に大きな影響を与えることなく、小麦表面付着菌を殺菌することができる。また、紫外線照射部に二酸化チタンを塗布することにより、殺菌時間が短縮できる。紫外線エネルギは2.8MJ/tと推定できる。

  • キーワード:紫外線、二酸化チタン、殺菌、品質、小麦
  • 担当:生研機構・生産システム研究部・乾燥調製システム研究
  • 連絡先:電話048-654-7079
  • 区分:共通基盤・作業技術
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

食品の安全性が叫ばれている中、農産物についても原料の段階から食品衛生を考える必要性がでてきている。そこで、ポストハーベスト農薬を用いることなく、穀物を安全に環境にやさしく乾燥して貯蔵するため、紫外線を用い品質劣化の原因である微生物を殺菌する技術の開発をする。

成果の内容・特徴

  • 穀物循環型紫外線照射装置は試作装置で、小麦を循環させながら紫外線を照射する構造である。上段及び下段のベルトコンベヤ上方に、中心波長254nmで、65Wの紫外線ランプを2灯づつ計4灯設置している。穀物循環量は500kg/hで、小麦層の厚さは4.4mmである。紫外線ランプと小麦層の距離は2cmで、紫外線照度は97W/m2である。紫外線照射部内側及びベルトコンベヤに二酸化チタンを塗布したものと、無塗布のものがある(図1)。
  • 紫外線照射により、細菌は2.1分、かびは1.9分の照射時間で90%の殺菌率を得ることができる。二酸化チタンを塗布した装置の場合では、細菌は1.6分、かびは1.5分の紫外線照射時間で90%の殺菌率を得ることができる。二酸化チタンを塗布した方が、細菌、かびともに短時間で殺菌することができる(図2)。
  • 97W/m2-5分間以内の紫外線照射及び二酸化チタンによる品質への大きな影響は認められない(表1)。
  • 90%の殺菌率を得るために必要な紫外線エネルギは、穀物1t当り2.8MJと推定できる(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 穀物衛生管理システムの開発研究に利用する。
  • 種籾消毒等幅広い利用も考えられるが更なる検討が必要である。
  • パイロットプラント等での実証実験が必要である。

具体的データ

図1 穀物循環型紫外線照射装置

 

図2 紫外線照射時間と微生物の生存率

 

表1 紫外線照射時間と品質

表2 殺菌エネルギの推定

 

その他

  • 研究課題名:高品質穀物乾燥貯蔵装置の開発研究
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:1997~2001年度
  • 研究担当者:久保田興太郎、日高靖之
  • 発表論文等:1)久保田・日高(2001)平成13年度生研機構研究報告会資料:25-31
                      2)久保田ら 特許出願(特願2002-374044)