ねぎ収穫機を事例とした農家の満足度・選好評価手法

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要約

満足度調査をもとにCSポートフォリオ分析を行い、満足項目・不満足項目を抽出した後、それらの改善を盛り込んだ選好調査をもとにコンジョイント分析を適用することで、機械の開発改良・更新需要等の評価指針に資することができる。

  • キーワード:ねぎ収穫機、満足度、CSポートフォリオ分析、選好、コンジョイント分析
  • 担当:生研機構・基礎技術研究部・コストエンジニアリング研究
  • 連絡先:048-654-7055
  • 区分:共通基盤・作業技術
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

農業機械の普及拡大に寄与する方法の一つとして、導入しようとする農家の要望や実際に導入した農家による機械の満足度から改善項目を把握し、対処することが挙げられる。そこで、ねぎ収穫機を事例にして、導入農家による満足度の評価をもとに一層機能改善が期待される事項を選定(CSポートフォリオ分析)し、それらの重要度を比較する手法(コンジョイント分析)を適用することによって、機械の開発改良及び更新需要の事前評価に資する。

成果の内容・特徴

  • 満足度調査の項目は、「機体諸元」「作業能率」等の基本性能や、「取扱い性」、「耐久性」のほか、「水平制御機構」等の固有の機能の中から評価すべき属性を選定する。利用者である農家は、各項目の満足度及び機械全体の満足度(総合満足度)に対し、その満足程度によって各々複数段階の評点をつける。
  • CSポートフォリオ分析は、満足度調査結果から満足項目・不満足項目を抽出できる。ここで用いる満足度(実現度)とは、各項目ごとの加重平均値である。また期待度(重要度)とは、総合満足度と各項目の満足度の偏相関係数であり、各項目の満足度が総合満足度に与える影響を表す。
  • 図1より、農家の期待度も高く、技術的達成度も高い項目として、「作業能率」「機体の水平制御装置」等であることがわかる。一方、期待度は高いが、満足度の低い「価格」については、性能要件や使用条件を勘案して優先的に改善要求に応える必要がある。また、満足度は高いが期待度が低位な潜在的満足領域に布置する項目(次期改善項目)は、農家の性能向上のニーズが強まれば相乗して改善実現(満足度向上)が求められる。ねぎ根部の土落としの性能や機体諸元に関わる属性が、これに該当する。
  • コンジョイント分析は、満足度向上が望まれる項目の中から、どの項目が選好において相対的に重要視されているかを把握することができるため、機械開発側にとって農家の改善要望に対処する際の順位付けに役立つ。
  • 「土落とし精度」の改善に関連した「新洗浄機構」の要否、収穫後の地干し作業に対応した「新収容機構」の要否、及び「投資金額」等を含む4項目について選好調査を行った場合、「機体の大きさ」「作業能率」に係わる「サイズ・能率」の平均相対重要度が最も大きくなり、更新要件としては他の属性よりも重視されていることがわかる(表1)。
  • 重要度の最も高かった「サイズ・能率」について経営面積別に分析すると、面積が大きくなるほど「サイズ・能率」を主因とした選択確率が高くなり、「投資金額」の重要度が他の要因に比して相対的に低下していく傾向が見られる(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 開発改良のための採るべき対策と優先順位が明らかとなり、普及拡大のための事前評価に適用できる。
  • 選好評価に際しては、実際に実現可能な水準を設定する必要がある。

具体的データ

図1 CSポートフォリオ分析による満足度構造

表1 コンジョイント分析による平均相対重 要度と水準の効用値

表2 経営面積別の属性の重要度

その他

  • 研究課題名:開発機の普及導入に関する研究
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:2001~2002年度
  • 研究担当者:藤井幸人、大西正洋、津賀幸之介