デジタルカメラを利用した無人ヘリ搭載式水稲生育情報測定装置

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

特定の波長域のみ抽出し分光撮影するデジタルカメラを産業用無人ヘリコプタに搭載し、50m程度上空からほ場を撮影して水稲の生育量等を測定する装置である。長辺方向60m程度の画像情報が得られるため水稲の生育むらを視覚的に把握することができる。

  • キーワード:リモートセンシング、無人ヘリ、デジタルカメラ、水稲、茎葉窒素、穂肥
  • 担当:生研センター・生産システム研究部・土壌管理システム研究
  • 連絡先:電話048-654-7068、電子メールmhorio@affrc.go.jp
  • 区分:共通基盤・作業技術
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

米の高品質化のために適切な施肥設計を行うには、判断材料となる生育情報を取得することが重要となる。葉色、茎数、草丈な どを測定して行われる現行の生育診断法では、測定に時間がかかるために測定点数が限られ、ほ場内の生育むらの把握が困難なこと、測定場所の選定を誤ると平 均値の誤差が大きくなることなどの問題がある。そこで、産業用無人ヘリに搭載したデジタルカメラで空中から撮影し、その画像を解析することによって広範囲 の生育情報を取得する方式の測定装置の開発を行った。

成果の内容・特徴

  • 産業用無人ヘリコプタにデジタルカメラを搭載し、50m程度上空から撮影して画像を取得するもので、カメラ装置、カメラの懸架装置、外光補正用の太陽光センサ、信号及び映像の送受信機、映像モニタなどの機器と、撮影された画像の解析処理を行うソフトとで構成される(図1)。カメラ装置はNIR(近赤外域)及びR(赤)(またはG:緑)の分光フィルタを取付けた2眼カメラ方式(図2)である。
  • 本装置では、ヘリ機体に搭載した太陽光センサで、撮影装置と同じ波長域の太陽光強度を測定し外光補正を行っているため、従来行われてきた標準板(標準白色板やグレースケール)を画像内に写し込んだり、あるいは地上においてその都度、校正データを取得する必要がない。
  • 専用に開発したソフトを用いて、撮影された2枚の画像をそれぞれ太陽光センサ値で補正して分光反射率に相当する画像に変換したのち、生育量と相関が高いことで知られるNDVI(正規化植生指数:(NIR-R)/(NIR+R))画像を作成することができる。
  • 開発装置で求めたNDVI値は、成果情報名「水稲の生育を診断する非接触の携帯式生育情報測定装置」の携帯式測定装置に表示される「GI値」(=NDVI×100)と高い相関がある(図3)。したがって、「GI値」と茎葉窒素含有量等との間で求められた関係式を活用して生育診断を行うことができる。
  • カメラ懸架装置の防振対策やカメラ装置の姿勢制御などの効果により、低照度時のシャッター速度1/32sでもブレのない安定した撮影が可能である。
  • 開発装置による撮影作業能率は、1フライト25分で隣接ほ場を連続撮影した場合最大7.5ha/h程度で、ほ場が1km四方に分散した条件では2ha/h程度である。

成果の活用面・留意点

  • 高品質米生産のための施肥設計など、水稲生産技術の普及に利用することができる。
  • 測定精度を維持するため、極端な低照度時(3000Lux以下を目安にする)や低太陽高度時(30度以下を目安にする)を避ける。

具体的データ

図1 撮影装置の概要

 

表 カメラ装置と太陽光センサの主な仕様

 

図2 カメラ装置の概要

 

図3 無人ヘリ搭載式と携帯式の測定値の関係

 

その他

  • 研究課題名:作物生育情報測定装置の開発、日本型水稲精密農業(PF)実証試験
  • 課題ID:21-01-07-01-11-03
  • 予算区分:経常・21緊プロ(委託)・次世代緊プロ(評価)
  • 研究期間:1998~2006年度
  • 研究担当者:堀尾光広、西村洋、後藤隆志、市川友彦、紺屋秀之、林 和信、手島 司
    ミノルタ(株)、ヤマハ発動機(株)、ヤンマー農機(株)
  • 発表論文等:後藤ら(2003)「作物生育量測定装置、作物生育量測定方法、作物生育量測定プログラム及びその作物生育量測定プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体」(特開2003-009664)