水稲の生育を診断する非接触の携帯式生育情報測定装置

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要約

近赤外用と可視光用の分光フィルタ付きフォトダイオードを上向きと下向きに一対として、水稲等の作物からの分光反射率を測定し、水稲の茎葉窒素含有量など の生育情報を取得する携帯式の測定装置。携帯してほ場内に入り簡易なボタン操作をすることで、1回に8株程度の生育量や茎葉窒素含有量などを測定できる。

  • キーワード:リモートセンシング、水稲、茎葉窒素、葉色、草丈、茎数、穂肥
  • 担当:生研センター・生産システム研究部・土壌管理システム研究
  • 連絡先:電話048-654-7068、電子メールmhorio@affrc.go.jp
  • 区分:共通基盤・作業技術
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

米の高品質化のために適切な施肥設計を行うには、判断材料となる生育情報を取得することが重要となる。茎数、草丈、葉色な どを測定して行われる現行の生育診断法では、測定に時間がかかるために測定点数が限られ、ほ場内の生育むらの把握が困難なこと、測定場所の選定を誤ると平 均値の誤差が大きくなることなどの問題がある。そこで、携帯してほ場内に入り、簡易なボタン操作で測定できる装置の開発を行った。

成果の内容・特徴

  • マーカロッド先端を水稲の草高に合わせ、水準器で水平を確認したうえで測定ボタンを押すと、ロッド先端を中心とする直径約60cmの範囲内の測定を行うことができる(図1)。
  • 低照度(3000Lux以下)及び低太陽高度(30度以下)の場合、測定ボタンを押すと警告表示し、測定・記録は行わないため、雨天時以外は使用条件に配慮する必要がない。
  • 上下センサ値から求めた分光反射率をもとに、生育量と相関が高いことで知られるNDVI(正規化植生指数:(NIR-R)/(NIR+R))を演算し、GI値(=NDVI×100、Growth Indexの略)として表示することができる。
  • 内部メモリに、データラベル、測定日時と時刻、上下センサ値、各波長の分光反射率、GI値、位置情報(GPS接続時)等を、最大999地点まで記憶でき、付属ソフトを使って測定後にCSVファイルとしてパソコンへ転送することが可能である。
  • GI値と現行の生育診断に用いられる「葉色(SPAD値)×茎数×草丈」との関係は、生育ステージごとに関係式が異なるものの、高い正の相関がある(図2)。
  • GI値と「茎葉窒素含有量(g/m2)」との関係においても高い正の相関があり、かつ生育ステージが異なっても同一の関係式を適用することができる(図3)。
  • 軽量(電池を含め約1.15kg)で1人作業による多点測定が容易であるため、慣行の測定に比べ作業者への負担が少ない。
  • 1回の測定に要する時間は1s以下で、作業能率は、生育マップ作成のため2.5m間隔でメッシュ状に測定するときは70a/h程度、ほ場1筆の平均を求めるときは1.5ha/h程度である。

成果の活用面・留意点

  • 測定者の影が入らないように、測定者は太陽との位置関係を配慮する必要がある。
  • 「茎葉窒素含有量」を推定するためには、品種ごとにGI値との関係を求める必要がある。
  • 「葉色(SPAD値)×茎数×草丈」を推定するためには、品種ごと及び生育ステージごとにGI値との関係を求める必要がある。
  • きめ細かな施肥設計に基づく高品質米生産技術などに活用できる。
  • 高性能農業機械実用化促進事業に移行する。

具体的データ

図1 開発装置の概要

 

表 開発装置の主な仕様

 

図2 「葉色(SPAD計)×茎数×草丈」と測定値との関係

 

図3 「稲体窒素」と測定値との関係

 

その他

  • 研究課題名:作物生育情報測定装置の開発、日本型水稲精密農業(PF)実証試験
  • 課題ID:21-01-07-01-11-03
  • 予算区分:経常・21緊プロ(委託)・次世代緊プロ(評価)
  • 研究期間:1998~2006年度
  • 研究担当者:堀尾光広、西村洋、紺屋秀之、林 和信、市川友彦、後藤隆志、手島 司
    (株)荏原製作所