刈払機のハンドル防振機構

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要約

刈払機のグリップ内部に棒状バネと2個のウエイトを付加、ハンドルを部分的に補強、主桿にウエイトを付加した防振機構である。常用エンジン回転速度で手腕系の振動障害を防止できるレベルまでハンドル振動を低減できる。

  • キーワード:刈払機、ハンドル振動、防振機構、振動障害
  • 担当:生研センター・基礎技術研究部・安全人間工学研究
  • 連絡先:電話048-654-7053、電子メールinfo-iam_kisobu@ml.affrc.go.jp
  • 区分:共通基盤・作業技術
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

刈払機は普及台数が多く、広範な条件で草刈作業用の機械として手軽に使われているが、ハンドル振動により手腕系の振動障害が生じる場合もあるため、利用者や医療関係者からその低減が望まれている。そこで、手腕系振動軽減用二段防振ハンドル(平成元年度成果情報)を改良し、刈払機のハンドル振動を振動障害が生じないレベルまで低減する防振機構を開発する。

成果の内容・特徴

  • 刈払機のハンドル振動を低減するため、グリップ内部に棒状バネと2個のウエイトを付加、ハンドルを部分的に補強、主桿にウエイトを付加することで、振動の節(振幅が極小となる点)を主桿のハンドル取付け部とグリップ部へ移動させることを特徴とする(図1)。
  • JISB7761に準拠した手腕系振動の測定法による、無負荷時のハンドル振動は、常用エンジン回転速度(7,000rpm)で防振機構無しの対照機に比べ、左右のハンドル形状の違いにより差があるが、左49%、右41%低減し、EU指令による1日8時間作業した場合の振動暴露対策値(振動加速度値2.5m/s2)をクリアできる(図2)。
  • 常用エンジン回転速度付近によって牧草地等で実作業を行った時の振動加速度値は、1.9~2.5m/s2と、通常の作業であれば1日8時間使用しても振動障害が生じないレベルで、手腕系振動障害の防止が期待できる(図3)。
  • 開発機は、常用エンジン回転速度付近で実作業(10分間)を行った後の振動感覚閾値(振動を感じることができる最小値)が、作業直後から10分間で対照機より小さく、振動による影響が少ないことを示す(図4)。
  • 防振機構の追加による質量の増加(500g)はあったものの、農家14名を対象としたモニター調査では、約8割が操作性は対照機に比べ遜色はないという意見であった。

成果の活用面・留意点

  • 今後、刈払機の防振機構として実用化する予定である。
  • 防振効果を高めるため、常用エンジン回転速度で作業を行う。
  • 市販機よりも振動は低減しているが、個人差や作業条件により振動の影響に差があることに注意する必要がある。

具体的データ

図1 防振機構の概要

図2 開発機の振動低減効果(無負荷)図3 実作業時のハンドル振動

図4 実作業後の振動感覚閾値*供試機排気量

その他

  • 研究課題名:農作業の安全性の向上、軽労化等に寄与する農業機械・装置等及び計測評価手法の開発
  • 課題ID:800-f
  • 予算区分:経常・次世代緊プロ(委託)
  • 研究期間:2003~2007年度
  • 研究担当者:中野丹、菊池豊、岡田俊輔、小倉昭男、石川文武、(株)丸山製作所
  • 発表論文等:特開2006-262859