使用済み農用ゴムクローラの芯金・ゴム分離回収システム

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要約

使用済み農用ゴムクローラの自動切断装置と、芯金1個単位に切断されたゴムクローラを芯金とゴムとに分離する分離装置とからなる回収システムである。回収した芯金を鉄材として、ゴムを熱源材料等としてリサイクルできる。

  • キーワード:農用ゴムクローラ、切断、分離、芯金、ゴム、リサイクル
  • 担当:生研センター・基礎技術研究部・コストエンジニアリング研究
  • 連絡先:電話048-654-7000
  • 区分:共通基盤・作業技術
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

コンバインや農用運搬機の走行部として用いられる農用ゴムクローラ(図1) は、その構成要素である芯金、スチールコードおよびゴムが強固に一体化されており、容易に分離することができないことから廃棄処理困難物の一つとされてい る。また、農用ゴムクローラは、建機用ゴムクローラに比べて鉄比率が低いため、ゴムをなるべく取り除く必要がある。そこで、従来の埋め立て処理や不法投棄 に代わり、芯金を鉄材として、また、ゴムを熱源材料等として素材別のリサイクル化を促進するために、芯金とゴム(スチールコード等を含む)とに分離回収で きるシステムを開発する。

成果の内容・特徴

  • 切断装置(平成18年度共通基盤研究成果情報「使用済み農用ゴムクローラの自動切断装置」参照)で芯金1個単位に切断されたゴムクローラ(幅110mm~650mm、以下、「切断小片」という。)を分離装置により芯金とゴムとに分離回収するシステムである(図1)。
  • 切断小片を分離装置(図2)の把持部に人力で装填し、油圧駆動の押圧部により切断小片の中央上部を固定した状態で、左右の把持部を各々中央から外方向に油圧により迅速に移動させることで切断小片の芯金からゴムを剥離させる方法で分離を行う。
  • 分離装置の把持部には一対の剥離刃が設けてあり、バネ機構により芯金の幅に応じて剥離刃の間隔が可変(20mm~56mm)するため、多様な幅の芯金に対応できる(図3)。また、矩形以外の芯金中央部がくびれた芯金形状にも対応可能である。
  • 分離装置による切断小片1個あたりの分離回収時間は、約20秒である。分離回収された芯金にはゴムが剥離しきれず付着したまま残存する場合があるが、分離回収された芯金の鉄比率およびゴムの回収率はいずれも8割以上であり(表)、鉄材として電炉等で製鋼処理する場合に支障のない鉄比率が得られる。
  • 自動切断運転を行っている間に分離作業を行うことにより、作業者1人で効率的に芯金とゴムの回収を行うことも可能である。口開けされた帯 状クローラ(幅450mm、全長4410mm、質量113kg、芯金数49)の供給から切断作業および分離作業を並行して行う場合、1時間あたり約3本の 処理が可能であり、毎時約110kgの芯金を鉄材として、また、約220kgのゴムを熱源材料等として回収可能である。

成果の活用面・留意点

  • 本システムは、2007年に特殊バネ(株)より市販化されている。
  • 芯金が平行に配列した構造であれば、小型建機用ゴムクローラにも適用可能である。
  • 分離回収されたゴムは、自動車廃タイヤ処理と同様に二次破砕処理工程を経てチップ化し製紙業・セメント製造業等のボイラ用燃料等として利用できる。
  • 芯金に突起がない等、特殊な形状の芯金には対応できない場合がある。

具体的データ

図1 芯金・ゴム分離回収システム

 

図2 分離装置の概要図3 分離装置の把持部の構造

 

表 性能試験結果

 

その他

  • 研究課題名:循環型社会の形成に寄与する農業機械・装置等の開発
  • 課題ID:800-d
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:2003~2007年度
  • 研究担当者:藤井幸人、大西正洋、特殊バネ(株)
  • 発表論文等:特開2006-264678、特開2007-260894