刈払機のエンジン騒音を低減させる遮音カバー

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

内側に多孔質の吸音材を貼付し、肩掛式刈払機のエンジン部に防振ゴムを介して取付けた遮音カバーである。耳元騒音を約3dBA低減でき、通常作業するエンジン回転速度で聴力障害が生じない基準値(日本産業衛生学会)をクリアできる。

  • キーワード:刈払機、耳元騒音、遮音、聴力障害
  • 担当:生研センター・基礎技術研究部・安全人間工学研究
  • 連絡先:電話048-654-7000
  • 区分:共通基盤・作業技術
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

刈払機は広範な場面で草刈作業用の機械として手軽に使われているが、その作業者耳元騒音(以下、「騒音」という。)により聴力障 害が生じる場合もあるため、利用者や医療関係者からその低減が望まれている。そこで、聴力障害が生じないレベルまで騒音を低減する技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • 遮音カバーは、内側に多孔質の吸音材を貼付し、肩掛式刈払機のエンジン部に防振ゴムを介して取付け、エンジンの騒音を低減する構造である(図1)。
  • 遮音カバーは、固有振動数がエンジン回転速度3,000~9,300rpmの基本周波数と重ならず、防振ゴムを介して本体に取付けることで共振を防ぐ構造となっている。また、曲面形状と後面の開放によりカバー内の音を後方へ逃がし、作業者方向への音を低減できる(図2)。放熱にも配慮し、運転中のエンジン温度はカバーが無い場合と同程度である。カバーおよび内側に貼付した吸音材(低反発ウレタン)は人体に影響の大きい高音域を吸音できる(図3)。
  • 無響室でISO22868に準拠した方法で測定した試作機の騒音は、遮音カバーのついてない対照機に比べ、約3dBA(音の エネルギで約50%)低減(エンジン回転速度3,000~9,300rpm)され、市販のエンジン式刈払機の中では国内最低レベルである。牧草地で実作業 を行った(エンジン回転速度7,000rpm程度)時の騒音は81dBAで、1日当たり8時間使用しても聴力障害が生じない基準値(日本産業衛生学会)を クリアできる(図4)。
  • 実験室内で、心理音質評価システム(小野測器OS-2140)を用いて測定した音響評価値のラウドネス(ISO 532B)は対照機に比べて低く、音質改善効果もある。音質については、使用者からも同様の評価がある。

成果の活用面・留意点

  • 2008年度に、刈払機のエンジン騒音を低減させる遮音カバーとして実用化する予定である。
  • 他型式の刈払機にも適用できる。
  • 作業者や作業条件により騒音の影響に差があるので、留意する必要がある。

具体的データ

図1 遮音カバーの外観

 

図2 音響インテンシティ(7,000rpm)

 

図3 周波数分析結果(7,000rpm)

 

図4 無負荷および実作業時の騒音

 

その他

  • 研究課題名:農作業の安全性の向上、軽労化等に寄与する農業機械・装置等および計測評価手法の開発
  • 課題ID:800-f
  • 予算区分:経常・次世代緊プロ(委託)
  • 研究期間:2003~2007年度
  • 研究担当者:中野丹、菊池豊、岡田俊輔、石川文武、津賀幸之介、小倉昭男、後藤隆志、(株)丸山製作所
  • 発表論文等:意願2008-4492