果樹園用の自走拾上げ式せん定枝粉砕搬出機

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要約

自走拾上げ式せん定枝粉砕搬出機は、果樹園内に幅1m程度に放置した直径30mm以下のせん定枝を機体中央方向に掻寄せ、拾上げて、粉砕し、網袋へ収容して搬出する歩行型作業機であり、リンゴ園やナシ園で作業者1名での作業能率は2~3h/10a程度である。

  • キーワード:果樹、せん定枝、拾上げ、シリンダカッタ、粉砕
  • 担当:生研センター・園芸工学研究部・果樹生産工学研究
  • 連絡先:電話048-654-7000
  • 区分:共通基盤・作業技術
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

リンゴ園やナシ園で発生するせん定枝は、白紋羽病などの発生要因となるため、ほ場から除去する必要があるが、その収集・運搬・粉 砕には20h・人/10a程度と多大な労力を要している。また、混住化等に伴う野焼きの抑制への対応やバイオマスの有効利用の観点から、除去したせん定枝 は、粉砕して堆肥副資材等として再利用・再資源化することが望まれている。そこで、作業者1名でせん定枝を効率的に拾い上げて粉砕するせん定枝粉砕搬出機 を開発する。

成果の内容・特徴

    • 開発機は、掻寄せ部、拾上げ部、搬送部、粉砕部、収容部等で構成される(図1、表1)。

1)掻寄せ部はスクリュオーガで構成され、事前に作業者が園内の樹列間に幅1m程度に列状に置いたせん定枝を機体中央方向に集める作用がある。

2)拾上げ部は、3°程度前傾し、互いに内向きに回転する2軸水平円盤で構成され、せん定枝を拾上げて後方に搬送する作用がある。

3)搬送部は上下各3個、合計6個のローラで構成され、拾上げ部で拾上げたせん定枝をローラ間に挟んで搬送する。

4)粉砕部は、1対の供給ローラ、シリンダカッタ、スロワで構成される。切断長は15mm程度であり、スロワで収容部に排出する。

5)収容部は、網袋載台、網袋支持枠で構成される。装着する網袋にはチップを20kg程度収容でき、満杯になった袋は機械上に載せてほ場端まで搬出できる。

6)機体後部にレーキを備え、拾上げ部で拾い残したせん定枝をほ場端まで掻き集める。

  • 走行速度はHSTにより無段階調節できる。また、掻寄せ部、拾上げ部、搬送部は油圧モータ駆動で、過負荷時には自動停止し、レバー操作で容易に正逆転できる。
  • 1人作業での作業能率は、ナシせん定枝量454kg/10aの条件で2.2h/10aであり、リンゴせん定枝量475kg/10aの条件で、2.9h/10aである(図2)。
  • リンゴせん定枝量192~619kg/10aの条件で、拾上げ率は68%以上であり、拾上げた枝とレーキでほ場端まで掻き集めたせん定枝を合計した収集率は91%以上である。

成果の活用面・留意点

  • 平成20年度に実用化の予定である。
  • 対象とするせん定枝の太さは直径30mm以下であり、対象外の太い枝はせん定時等に除去し、別途処理する必要がある。また、枝分かれした枝はせん定時に切り分けることが望ましく、土壌や異物が混入しないように注意する。
  • 作業前に列状に集める枝の方向は、斜め方向でも良いが進行と直角方向には置かない。
  • レーキでほ場端に掻き集めたせん定枝は、開発機で再度拾上げチップ化して袋に収容する作業を行う必要がある。

具体的データ

図1 自走拾上げ式せん定枝粉砕搬出機

 

表1 主要諸元 図2 作業能率(作業者1名)

 

その他

  • 研究課題名:循環型社会の形成に寄与する農業機械・装置等の開発
  • 課題ID:800-d
  • 予算区分:経常・次世代緊プロ(共同)
  • 研究期間:2004~2007年度
  • 研究担当者:金光幹雄、太田智彦、齋藤貞文、山本聡史、久保田興太郎、安食惠治、(株)IHIシバウラ、(株)氏家製作所、文明農機(株)
  • 発表論文等:特開2007-98359