汎用型飼料収穫機

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要約

収穫・細断機能を持ち、収穫部アタッチメントの交換により、青刈りトウモロコシ、予乾牧草、飼料イネ等の多様な飼料作物に1台で汎用的に対応できる自走式ロールベーラ。クローラ式走行部によりトラクタ作業が困難な軟弱圃場でも作業できる。

  • キーワード:ロールベーラ、青刈りトウモロコシ、牧草、飼料イネ、サイレージ
  • 担当:生研センター・畜産工学研究部・飼料生産工学研究
  • 連絡先:電話048-654-7000
  • 区分:共通基盤・作業技術、畜産草地
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

水田転作や裏作での飼料作付は、府県の飼料作付面積の約3割を占め、重要な飼料生産基盤として位置付けられているが、降雨の影響 を受け易くトラクタ作業が困難になる等の課題を抱えている。また、近年、コントラクタが飼料作の担い手として普及を期待されているが、飼料作物ごとに別々 の機械体系が必要で、多大な初期投資が普及の阻害要因となっている。そこで、府県における水田飼料作の推進とコントラクタの一層の普及を図るため、青刈り トウモロコシ、牧草、飼料イネ等の飼料作物を、トラクタ作業が困難な圃場条件でも1台で収穫・細断・ロール成形できる自走式作業機を開発する。

成果の内容・特徴

  • 開発機は、飼料作物を収穫し10~30mmに細断する収穫部、細断物を投入するホッパ、細断型ロールベーラと同じ特殊バー チェーン構造の成形室(直径1m、幅0.85m)、ネット式結束装置、クローラ式走行部から構成される。収穫部は、トウモロコシ用(2条刈ロークロッ プ)、予乾牧草用(拾い上げ幅1.6mピックアップ式)、飼料イネ青刈り収穫用(6条刈リール式)の各アタッチメントを工具なしで容易に着脱できる(図1、表1)。
  • 開発機は、収穫部で飼料作物を収穫・細断しホッパに投入、ホッパ底部のコンベアで材料を成形室に搬送、成形室が満量になった 時点でコンベアが停止し材料をホッパに貯留する一方、ネットでロールベールを結束、ロールベールを放出、コンベアが再始動してホッパ内の材料を成形室に搬 送の動作を自動的に行う。従来のロールベーラのようにネット結束時に収穫作業を中断する必要がない。作業風景を図2に示す。
  • 開発機の平均作業速度および圃場作業量は、トウモロコシ(乾物収量1.6t/10a、含水率70%、30a圃場の時)で 1.41m/s、42a/h、イネ科予乾牧草(乾物収量0.5t/10a、含水率61%、50a圃場の時)で0.56m/s、48a/h、飼料イネ(乾物 収量0.8t/10a、含水率57%、25a圃場の時)で0.83m/s、29a/hである。なお、5a以下の狭小圃場でも平均14a/hの圃場作業量で 作業可能である。また、貫入抵抗値が0.36MPaの軟弱圃場においても作業速度0.76m/sで作業可能である(飼料イネ収穫時)。圃場面積別の圃場作 業量を図3に示す。
  • ロールベール放出時のロスは、作物の種類を問わず2%未満である。ロールベールの平均質量および平均乾物密度は、トウモロコシで488kg、197kg/m3(平均含水率71%、n=20)、イネ科予乾牧草で414kg、235 kg/m3(平均含水率55%、n=47)、飼料イネで314kg、177 kg/m3(平均含水率59%、n=17)である。いずれのサイレージもV-scoreが90点以上の高い発酵品質であり、一年間の貯蔵を経た後も品質がほとんど低下しない。

成果の活用面・留意点

  • 府県の水田転作・裏作、転換畑において、コントラクタ、農業法人、飼料生産組合等の組織による利用に有効である。なお、本開発機は平成21年に市販化予定である。
  • 移動する際は、高さ制限の関係上、積載量6t以上の低床トラックを用いる必要がある。

具体的データ

図1 汎用型飼料収穫機の概念図表1 開発機の主要諸元

 

図2 開発機の作業風景(左からトウモロコシ、予乾牧草、飼料イネの収穫作業)

 

図3 圃場面積と圃場作業量の関係

 

その他

  • 研究課題名:生産性向上による農業構造改革の加速化に寄与する農業機械・装置等の開発
  • 課題ID:800-a
  • 予算区分:経常・次世代緊プロ(委託)
  • 研究期間:2003~2007年度
  • 研究担当者:志藤博克、橘保宏、川出哲生、澁谷幸憲、高橋仁康、道宗直昭、山名伸樹、(株)タカキタ、ヤンマー農機(株)
  • 発表論文等:特開2004-321061