ITを活用した乳牛飼養管理システム

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要約

搾乳ユニット自動搬送装置が自動収集する乳量データに連動して給餌量を算定し、乳牛を電子個体識別して給餌するとともに、収集データを自動的に統合管理する繋ぎ飼い牛舎用の飼養管理システム。牛舎イメージ表示で分かり易く効率的に飼養管理できる。

  • キーワード:乳牛、飼養管理、搾乳ユニット自動搬送装置、自動給餌、電子個体識別
  • 担当:生研センター・畜産工学研究部・家畜管理工学研究
  • 連絡先:電話048-654-7000
  • 区分:共通基盤・作業技術、畜産草地
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

搾乳ユニット自動搬送装置や自動給餌機の導入により繋ぎ飼いでの省力的多頭飼養が可能となったが、観察と記憶だけでなく電子記録 等による信頼性の高いデータを活用した合理的な飼養管理への展開と、飼料価格の高止まりが想定される中で乳牛の能力に応じた適切かつ効率的な給餌による濃 厚飼料費の削減が求められている。
  そこで、搾乳ユニット自動搬送装置と自動給餌機を装備する繋ぎ飼い牛舎に、ITを活用することによって、日常的に自動収集・電子記録される乳牛の個体情報に基づく乳牛飼養管理システムを開発する。

成果の内容・特徴

  • 本システムは、牛床識別・乳牛に関するデータ収集・通信機能を付加した搾乳ユニット自動搬送装置(以下、搬送装置)、牛床識 別に加え牛体検出・電子個体識別・通信機能を付加した自動給餌機、この両者と双方向に通信してデータを統合管理するパソコン(以下、牛舎PC)とで構成す る飼養管理システムである(図1)。
  • 牛舎PCでは、収集・入力した個体データを牛番号で統合し、牛床配列順に牛舎イメージで表示する(図2)。各牛床番号の乳牛データアイコンをクリックすれば、繁殖管理・乳量・注意分房等に関するさらに詳細な飼養管理データへと展開できる。
  • 搬送装置は、搾乳作業中に牛床識別し、対応する牛番号・前回乳量・注意分房データ(予め牛舎PCより受信)を搾乳ユニット操 作パネルに表示する。作業者はデータに基づく乳牛確認と従来手順での搾乳作業ができる。左右に居る乳牛の搾乳が終了し、両方の搾乳ユニットが離脱すると、 乳量データは搬送装置に自動収集される。全ての搾乳作業を終えてホームポジションに戻ると収集データは牛舎PCに送信される。
  • 牛舎PCでは、平均日乳量データ(10日間の乳量データから最大値1個と最小値3個を除いて平均)と給餌モデル(初産用と2産以上用に区分)を用いて個体別の給餌データ表を自動作成し、自動給餌機に自動送信する。
  • 自動給餌機は、牛床識別の後、その牛床にいる乳牛の電子耳標と牛体の両方を検出して給餌し、同時に牛床番号・牛番号データを収集する。牛の入替り等があっても適切かつ効果的な給餌が可能である。牛体検出だけの場合は、前回給餌データを利用する。
  • 本システムを60頭規模のモニタ牧場で運用した場合のコスト削減効果例を表に示す。

成果の活用面・留意点

  • 繋ぎ飼い牛舎において、例えば乳量データに基づく効率的給餌など、合理的な飼養管理が期待できる。なお、本システムは、平成21年に市販化の予定である。
  • 本システムの適用は、搾乳ユニット自動搬送装置と自動給餌機の導入牛舎で、乳牛に電子耳標を取り付け、給餌モデルは利用者が準備することを前提としている。
  • 既存の搾乳ユニット自動搬送装置も基板交換等で本システムへ拡張可能である。

具体的データ

図1 ITを活用した乳牛飼養管理システムの構成

 

図2 牛舎イメージによるデータ統合管理(牛舎PC)

 

表 本システム導入(H17.11 月末)前後の生乳生産の推移(モニター牧場の事例)

 

その他

  • 研究課題名:IT、ロボット技術等を活用した革新的な農業機械・装置等の開発
  • 課題ID:800-e
  • 予算区分:経常・次世代緊プロ(共同)
  • 研究期間:2003~2007年度
  • 研究担当者:平田晃、後藤裕、川出哲生、阿部洋平、道宗直昭、山名伸樹、オリオン機械(株)、北原電牧(株)、富士平工業(株)