乗用型トラクタの安全キャブ・フレームの死亡事故抑止効果

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要約

農業者アンケート結果によると、乗用型トラクタの安全キャブ、安全フレームには、転落・転倒事故における死亡事故を1/8程度に抑止する効果が認められる。この結果は、農作業死亡事故低減を目的とした安全キャブ・フレームの普及推進に使用されている。

  • キーワード:乗用型トラクタ、事故、転落・転倒、安全キャブ・フレーム、効果
  • 担当:生研センター・特別研究チーム(安全)
  • 連絡先:電話048-654-7000
  • 区分:共通基盤・作業技術
  • 分類:行政・普及

背景・ねらい

農作業死亡事故は年間約400件発生しているが、その約1/3が乗用型トラクタ(以下「乗トラ」という。)に係る事故である。さ らに、このうち70%程度が転落・転倒事故である。したがって、農作業死亡事故を減少させるためには乗トラ転落・転倒事故への対策が不可欠である。しか し、これに対する安全キャブ・フレーム(以下「ROPS」という。)等の有効性に関し、定量的な検討は十分されていない。そこで、全国の農業者を対象とし たアンケート調査によりこれを行い、結果をROPS普及推進のための施策に使用する。

成果の内容・特徴

  • 本成果は、平成17年度に実施し、全国26道府県の1428戸から回答を得たアンケート調査結果に基づいている。調査内容 は、過去にあった事故事例での事故状況、ケガの程度およびROPSの有無等、回答者におけるROPSならびにシートベルトの普及・使用状況である。また、 事故事例の収集範囲は、回答者本人、家族および親戚等である。
  • 調査で得られた、過去の事故事例の累計では、転落・転倒事故が事故件数の72%、死亡事故数でも68%を占め、転落・転倒事故対策が重要である(表1)。
  • 乗トラの転落・転倒事故においては、ROPSの有無により、死亡事故に至る割合に明確な差がある。ROPS非装着機では25%、装着機では3%であり、ROPSには、転落・転倒事故における死亡事故を1/8程度に抑止する高い効果が認められる(図1)。
  • ROPSの装着率は、回答者所有機において69%であり(図2)、未装着機に対し装着を推進する必要がある。
  • シートベルトは、回答者所有機の51%に装備されているが、これらを所有する回答者の55%は「全く使用しない」と回答している(図3)。シートベルトは、事故時に運転者が投げ出されることを防止し、ROPSの提供する防護域内に留めるためのものであることから、ROPS装着機での死亡事故を抑止する上で、使用促進が必要である。

成果の活用面・留意点

  • 本成果の内容は、農林水産省において、平成19年度から農作業死亡事故減少を目的とし、乗トラに対するROPS装着を促進するために引用されている。
  • 『農作業安全情報センター』(http://www.naro.affrc.go.jp/org/brain/anzenweb/<、生研センターで運営)に、本成果に基づきROPS装着とシートベルトの使用を呼びかける記事および調査報告書全文等の関連情報を掲載するとともに、未装着機についてROPSを取り付けることが可能かどうかを調べることができるデータベースを公開している。
  • ROPSの有効性を高めるためには、併せてシートベルトの使用を推進する必要がある。

具体的データ

表1 乗トラにおける原因別事故件数1)およびケガの程度

 

図1 転落・転倒事故におけるROPSの有無によるケガの程度の差異

 

図2 ROPSの普及状況 図3 シートベルト装備機所有者における使用状況

 

その他

  • 研究課題名:農作業の安全性の向上、軽労化等に寄与する農業機械・装置等および計測評価手法の開発
  • 課題ID:800-f
  • 予算区分:経常・所内特研
  • 研究期間:2005~2007年度
  • 研究担当者:冨田宗樹、水上智道、高橋正光、塚本茂善
  • 発表論文等:森本ら(2006)農業機械の事故実態に関する農業者調査結果(第1報):3-27,生研センター資料