籾で玄米タンパク含量を測定できるコンバイン搭載型反射式近赤外分光装置

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要約

籾の状態で玄米タンパク含量を測定することができる反射式近赤外分光装置である。コンバインに搭載して収穫作業中に測定することにより、ほ場ごとの玄米タンパク含量を把握することができる。

  • キーワード:反射式近赤外分光装置、玄米タンパク含量、コンバイン
  • 担当:生研センター・生産システム研究部・収穫システム研究、大規模機械化システム研究、土壌管理システム研究
  • 連絡先:電話048-654-7000
  • 区分:共通基盤・作業技術
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

高品質な米生産を推進するためには、玄米タンパク含量の測定は必要不可欠である。現状では乾燥調製した玄米を埃の少ない室内で測 定するような手順であるが、収穫時において籾の状態で事前に把握できれば、その情報は高精度な施肥設計、共乾施設の仕分け乾燥等に利用可能であり、高品質 米生産に寄与できる。そこで、籾の状態で玄米タンパク含量が測定可能で、かつコンバインに搭載可能な反射式近赤外分光装置を開発する。

成果の内容・特徴

  • 本装置は測定部と制御表示部により構成される。測定部は、試料充填部に充填した籾に人工光を照射し、その時の反射光を分析す ることにより玄米タンパク含量を測定する。この反射光測定方式では、充填密度による測定誤差が少ないためコンバイン搭載には有効である。光源はハロゲンラ ンプを使用しており、光が籾に均一に当たるように光反射筒を設け光の拡散を防いでいる。検出器には回折格子が備えられており、後分光により 730~1090nmのスペクトルを測定する。装置内の演算処理部には籾を投入したときのスペクトルより玄米タンパク含量を測定できる検量線を有する(図1、表1)。なお、検量線は籾のスペクトルから玄米タンパクが推定できるように、室内試験で籾のスペクトルを測定し、同サンプルの玄米タンパク含量をケルダール法にて測定した結果を使って、PLS回帰分析によって作成したものである。
  • 測定部はコンバインのグレンタンクに装着する。制御表示部はコンバインの運転席に配置し、タッチパネルで簡単に操作できる(図2a)。測定手順は、穀粒口より放出された籾をサンプリングし、計測部に籾が充填されたら測定を行い、測定後はグレンタンク内に返還する方式である(図2b)。測定周期は計測部における籾充填時間から30秒である(表1)。
  • 本装置をコンバインに搭載することにより、収穫しながら玄米タンパク含量を測定することができる。その時の測定精度は、相関係数0.65、予測標準誤差0.22である(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 本装置をコンバインに搭載し作業することにより、ほ場ごとの玄米タンパク含量を把握することができるため、荷受け時に仕分けしタンパク含量別の乾燥調製が行えたり、次年度への施肥管理用のデータとして用いることができる。
  • 測定部は定期的にメンテナンスする必要がある。また本装置をコンバインに搭載する場合には、振動および塵対策を施す必要がある。
  • 倒伏して表面の汚れた籾については測定誤差が大きくなる。
  • あらゆる品種の籾で使用する場合は、検量線のさらなる精度向上を図る必要がある。

具体的データ

図1 測定部内部の光源と検出器の配置表1 主要諸元

 

 

図2 コンバインに取付けた状態と測定方法

 

 

図3 コンバインに搭載したときの玄米タンパク含量測定結果

 

その他

  • 研究課題名:IT、ロボット技術等を活用した革新的な農業機械・装置等の開発
  • 課題ID:800-e
  • 予算区分:経常・次世代緊プロ(共同)
  • 研究期間:2003~2007年度
  • 研究担当者:日高靖之、栗原英治、西村 洋、林 和信、堀尾光広、紺屋秀之、梅田直円、杉山隆夫、澁谷幸憲、松野更和、市川友彦、内間亜希子、静岡製機(株)、(株)相馬光学、ヤンマー農機(株)、(株)荏原電産
  • 発表論文等:特許出願中