湿潤土壌でも土を練りにくく高速作業が可能なディスク式中耕培土機

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要約

前後に2対のディスクを設けた、トラクタまたは乗用管理機直装式の中耕培土機である。ロータリ式中耕機に比べ、高速化により作業能率は1.5~2倍、収穫前の雑草量は半分程度となる。また、湿潤な土壌条件でも土を練りにくく、大豆の増収が期待できる。

  • キーワード:中耕、培土、ディスク、湿潤土壌、大豆
  • 担当:生研センター・基礎技術研究部・資源環境工学研究
  • 代表連絡先:電話048-654-7000
  • 区分:共通基盤・作業技術
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

大豆の中耕培土は、ロータリ式中耕機により作物側に土を飛ばす方法(以下「R」)や、同機の後方に培土板を取付けて土を作物側に寄せる方法(以下「R+m」)で行われるのが一般的である。梅雨期に大豆の中耕培土を行う地域も多いが、これらの方法で水分の高い土壌条件下で作業すると、ロータリづめによる土の練り付けや培土板による土の圧縮が起こり、土壌物理性を悪化させる。そのため、土壌水分の高い状態が長く続くとその間は作業できず、雑草が繁茂してしまうことがある。また、受託作業の増加等により高能率化の要望もあるが、RまたはR+mの作業速度は0.5~0.8m/s程度と遅い。そこで、これらの問題を改善する中耕培土機(以下、本文では「開発機」、図表では「D」)を開発する。

成果の内容・特徴

  • 開発機は、前後に設けられた2対の凹型ディスクが土壌抵抗により回転し、土を横に反転移動させることにより中耕培土を行う機械である(対応条間:60~85cm)(図1)。培土量の変更は、後列ディスクの角度や間隔の調整(図1右)等により行い、後列ディスクの取付け角度の変更により、作物が小さい時でも作業できる(図2右)。
  • 開発機は1.0~1.4m/s程度の高速作業が可能であり、RまたはR+mの1.5~2倍の作業能率が得られる(表1)。また、実用的な作業速度における中耕体積あたりの所要動力と燃料消費量は、開発機がRの半分程度である。
  • 開発機は土を反転して培土するため、雑草抑制効果が高い(試験の結果、収穫前の雑草量は、R+m区(1回目R、2回目R+mの区)より平均で4~5割少ない)(図3a)。
  • 開発機は、湿潤土壌条件下において土の練り付けや圧縮が少なく、砕土性能が良好である(試験の結果、R+m区より平均土塊径が2割程度小さい)。そのため、湿潤土壌で作業した場合、収穫前まで膨軟で水分が高い土壌の状態(試験の結果、平均で固相率が5%程度低く、含水比が10%程度高い)を維持できる。
  • 開発機で湿潤土壌条件下において作業した時には、土壌物理性悪化の軽減、砕土の改善等により大豆の増収が期待できる(試験の結果、R+m区より平均で15%多収)(図3b)。

成果の活用面・留意点

  • 2009年度に市販化する予定である。
  • 土が硬いために耕深が浅い時は、付属のチゼルを下向きにして作用させる(図1中)。
  • 作業時には、条間によらず後列ディスクの取付け間隔(図1右の※)が一定となるように調整する。また、培土量、作業速度および土壌条件に応じて後列ディスクの角度を調節する。

具体的データ

図1 乗用管理機用開発機の外観(左)、トラクタ用開発機の主要部側面図(中)と平面図(右)

図2 通常仕様(左)と作物生育初期仕様(右)のディスク配列と作業状況

表1 作業能率の測定例1)

図3 雑草乾物重および大豆収量1)

その他

  • 研究課題名:環境負荷低減に寄与する農業機械・装置等の開発
  • 課題ID:800-c
  • 予算区分:経常、所内特研、緊プロ
  • 研究期間:2002~2008年度
  • 研究担当者:手島司、後藤隆志、藤井幸人、長澤教夫、大西正洋、小倉昭男、井関農機(株)、小橋工業(株)、
                       鋤柄農機(株)
  • 発表論文等:後藤ら「中耕除草機」特許第4005512号