トラクタおよび自脱コンバインの省エネ運転方法

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要約

中~軽負荷のロータリ耕では、トラクタの走行およびPTO速度段を上げ機関回転速度を下げることで約15~40%、自脱コンバインの収穫作業では、円滑に作業できる範囲内で作業速度を2倍程度に上げることで約20~30%燃料消費量を低減できる。

  • キーワード:トラクタ、自脱コンバイン、燃料消費量、省エネ
  • 担当:生研センター・基礎技術研究部・資源環境工学研究
  • 代表連絡先:電話048-654-7000
  • 区分:共通基盤・作業技術
  • 分類:行政・普及

背景・ねらい

化石燃料の消費による地球温暖化の進行が問題となっている。中~軽負荷のトラクタ作業では機関回転速度を下げること、トラクタやコンバイン等による作業では高速作業を行うこと等により燃料消費量を節減できるとされているが、どの程度の効果があるのかが示されていないこともあり、必ずしも一般的な運転方法とはなっていない。そこで、ほ場作業の中では燃料消費量が多い、トラクタによるロータリ耕および自脱コンバインによる収穫を対象に、運転条件の違いで燃料消費量がどの程度変化するかを調査する。

成果の内容・特徴

  • 機関出力24kW級のトラクタ(1999年製、機関:直接噴射式、電子ガバナ付き)による路上走行時およびロータリ耕時の燃料消費量と、機関出力21kW級の3条刈り(2000年製、機関:直接噴射式)および機関出力30kW級の4条刈り(2000年製、機関:直接噴射式、電子ガバナ付き)自脱コンバインによる収穫作業時の燃料消費量を、容積式流量計を用い運転条件を変えて調査した情報である。
  • トラクタの路上走行において、最高段以外の走行速度段に入れ、比較的高い機関回転速度で運転している場合には、走行速度段を上げ機関回転速度を下げることにより、同程度の走行速度における走行距離あたり燃料消費量を約20~50%低減できる(図1)。
  • 中~軽負荷のロータリ耕において、比較的高い機関回転速度で運転している場合には、走行速度段とPTO速度段を上げ、作業速度および耕うんピッチが同程度となるように機関回転速度を下げることにより、作業精度を低下させることなく単位面積あたりの燃料消費量を約15~40%低減できる(表1)。
  • ロータリ耕では、単位面積あたりの燃料消費量は作業速度が高くなるほど、PTO回転速度が低くなるほど低下し、液性指数0.3の重粘土水田では、作業速度0.5m/sの時には0.35m/sの時に比べ約25%、0.2m/sの時に比べ約50%(図2左)、PTO回転速度1,050rpmの時に比べ、830rpmの時には約15%、600rpmの時には約30%低減できる(図2中)。また、液性指数0.3~1.0程度の重粘土水田における同燃料消費量は土壌含水比が低いほど少なく、土壌水分の低い時に作業すると最大約20%低減できる(図2右)。
  • 自脱コンバインによる水稲収穫作業では、単位面積あたりの燃料消費量は、円滑に作業できる範囲内では作業速度が高いほど低く、作業速度0.9m/sの時には0.5m/sの時に比べ約30%、1.3m/sの時には0.7m/sの時に比べ約20%低下する(図3左)。また、こぎ深さを深くすると、浅い時に比べ同燃料消費量が5%程度増加する(図3右)。

成果の活用面・留意点

  • 本研究成果の一部は農林水産省生産局編の「農業機械の省エネ利用マニュアル(2007年11月)」に掲載され(他は、改訂時に掲載予定)、広く利用されている。
  • 作業速度等の運転条件を変更すると作業精度が変わるため、目標とする作業精度が得られる範囲内で燃料消費量が少ない運転条件を選択する必要がある。
  • 本成果の内容は代表的な供試機を特定の条件下で試験した結果であり、燃料消費量の低減割合の数値は供試機や作業条件によって変わる。

具体的データ

図1 トラクタ路上走行時の運転条件と燃料消費量

表1 ロータリ耕時の速度段等と燃料消費量

図2 トラクタのロータリ耕における運転条件等と燃料消費量

図3 自脱コンバインの水稲収穫作業における運転条件と燃料消費量

その他

  • 研究課題名:循環型社会の形成に寄与する農業機械・装置等の開発
  • 課題ID:800-d
  • 予算区分:経常、所内特研
  • 研究期間:2003~2008年度
  • 研究担当者:大西正洋、藤井幸人、手島司、後藤隆志、冨田宗樹、川瀬芳順