TMRを直径の異なる高密度なロールベールに成形できる機構
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要約
微細な材料を含むTMRを、質量約300~500kgの投入量に応じた直径(約0.8~1.0m)にロールベール成形できる機構。ロールベールの乾物密度は300kg/m3以上で、所要動力は最大でも11kW程度であり、成形から密封までのこぼれによる損失は1%程度である。
- キーワード:TMR、発酵、高密度、細断型ロールベーラ、可変径式ロールベーラ
- 担当:生研センター・畜産工学研究部・飼料生産工学研究
- 代表連絡先:電話048-654-7000
- 区分:共通基盤・作業技術、畜産草地
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
飼料自給率向上に向け、自給サイレージが利用でき、作り置き可能な発酵TMR(粗飼料と濃厚飼料等を混合し発酵処理した大家畜向けの飼料)の普及に期待が寄せられている。しかし、トランスバッグでTMRを発酵処理する方式では、詰め込み作業の労力が大きい、梱包密度が低くカビが発生する等の課題がある。そのため近年、TMRを細断型ロールベーラで成形し、ベールラッパで密封し、発酵処理する方法が試みられているが、ロールベール(以下「ベール」)のサイズは固定で、委託農家の給餌頭数に応じた量の変更はできない。そこで委託農家の要望に合う量のTMRを高密度梱包・密封する調製用機械の開発を念頭に置き、その基礎技術としてTMRを直径0.8~1.0mのベールに成形する機構を開発する。
成果の内容・特徴
- 本機構(図1)は、タイトチェン式の細断型ロールベーラの成形室(直径0.8m 、幅0.85m)をベースとし、直径を1.0mまで拡大できる成形室を有する。また、容量約2m3のホッパと底部にスラットコンベアを備えた荷受け部を有する。駆動はトラクタPTO軸による。
- 成形室(図2)は、荷受け部から供給されるTMRが一定量(ベール直径が0.8mとなる量)を超えると、タイトチェンの張力が上昇し、成形室両側面のガススプリングに支持されたテンションスプロケットが成形室中心方向に移動し、成形室直径を拡大する。荷受け部出口の接触式ON-OFFセンサが供給終了を感知すると、スラットコンベアの停止、ネットでベール結束、成形室の開放、ベール放出までの動作を自動で行う。
- 予め投入質量を300~500kgに計量されたTMR(表1)を、投入量に応じた直径(約0.8~1.0m)のベールに成形でき、乾物密度は300kg/m3以上となる(表2)。成形から密封までのこぼれによる損失の割合は、ベール質量とこぼれによる損失の合計に対して1%程度(データ省略)である。所要動力はTMR供給終了前後に最大となり、ベール質量が増えるに連れて大きくなるが、その範囲は約6~11kWである。また、毎時処理量は11~16t/h程度である。
- ベールに調製・密封し、1ヶ月間保存したTMR(2008年7月8~9日に調製)には、カビの発生は見られなかった。
成果の活用面・留意点
- TMRのロール成形から密封まで自動で行う装置開発の基礎技術となる。
- 成形したベールは市販のベールラッパで密封可能である。
- 成形室直径が0.8m(ベール質量300kg程度)に満たない場合はベール成形できない。
具体的データ




その他
- 研究課題名:生産性向上による農業構造改革の加速化に寄与する農業機械・装置等の開発
- 課題ID:800-a
- 予算区分:経常、委託プロ(えさ)
- 研究期間:2006~2008年度
- 研究担当者:川出哲生、志藤博克、橘保宏、高橋仁康
- 発表論文等:志藤ら「ロールベーラにおける成形装置」特開2007-267675