ドリフト低減効果の高いスピードスプレーヤ用ノズル

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要約

農薬散布作業に使用される各種スピードスプレーヤに装着できるノズルである。慣行ノズルと同等の散布作業を行うことができ、実用的な防除効果を確保するとともに、ドリフト(農薬飛散)を慣行ノズルよりも大幅に低減することができる。

  • キーワード:ノズル、農薬散布、ドリフト、スピードスプレーヤ
  • 担当:生研センター・生産システム研究部・生育管理システム研究
  • 代表連絡先:電話048-654-7000
  • 区分:共通基盤・作業技術
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

農薬を用いた病害虫あるいは雑草防除作業が不可欠となる農作物生産の現場においては、農薬に関する安全性や信頼性確保の観点から、農薬散布時の飛散(ドリフト)の防止が課題となっている。しかし、既存スピードスプレーヤで用いられている慣行ノズルはその噴霧に微細粒子が多く含まれ、ドリフトが発生しやすいことが指摘されている。そこで、スピードスプレーヤに装着して、慣行ノズルと同等の能率で作業ができ、防除効果を確保しつつ、慣行ノズルよりもドリフトを低減できるノズルを開発する。

成果の内容・特徴

  • 開発したドリフトし難い大きさの粒径の粒子を多く噴霧する2種類のノズルは、空気混入式単頭型ノズル(以下ノズル1)と空気非混入式単頭型角度付ノズル(以下ノズル2)である。ノズル1は、噴霧粒径(体積中位径)が慣行ノズルの約4倍であり、また、ノズル2は、粒径が慣行ノズルの約3倍である。開発ノズルの常用圧力、噴霧量、取付部等は慣行ノズルと同等であり、一般の国産スピードスプレーヤに装着して、慣行ノズルと同等の作業が可能である(表1図1)。
  • 開発ノズルをスピードスプレーヤに装着(ノズル1と2を交互に配列して装着)して薬剤散布を行い、ほ場境界からの距離5、7.5、10、15mの位置に設置した感水紙に付着した液斑の被覆面積率を画像処理ソフトを用い評価した結果(図2)等から見て、開発ノズルは慣行ノズルに比べ、同じ距離で最大1/10程度にドリフトを抑制することが可能である。さらに、付着性能については、上記画像処理ソフトと標準付着度指標の関係に基づいて指数化した結果、開発ノズルは慣行ノズルと概ね同等の付着性能が期待できる。
  • わい化栽培リンゴ園において、開発ノズルを前記2と同様に装着したスピードスプレーヤを用いて、慣行作業と同じ方法(農薬の種類、希釈倍率、散布量)で使用した場合、対象作物や病害虫および作業方法等が同じであれば、概ね慣行ノズルと同等の防除効果が期待できる(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 開発ノズルは、2010年度から市販化の予定である。
  • 既存スピードスプレーヤに開発ノズルを装着して使用することにより、慣行ノズルと同等の作業ができ、ドリフトによる近隣への危被害発生リスクを軽減できる。
  • 同じ散布機を使用した場合、散布量が多いほどドリフト量は多くなるため、過度な散布量とならないように留意する必要がある。
  • 対象作物・病害虫および農薬の種類、あるいはほ場条件等によって、ドリフト低減効果や防除効果が異なることも想定されるため、ドリフト低減ノズルであっても、ドリフトに対する基本的な注意事項を怠った場合などは、ドリフトの低減効果が得られない場合があるので注意が必要である。
  • 開発したノズルを使用する際に、強風下の場合、あるいは微風であっても散布地点から至近距離に別ほ場や作物がある場合等では、散布経路や作業日程の変更、遮蔽物(シート、ネット等)の設置等、ドリフトによる危被害防止への対応が不可欠である。

具体的データ

表1 開発ノズルの主な仕様

図1 開発ノズルの外観

表2 わい化栽培リンゴ園における防除効果

図2 わい化栽培リンゴ園におけるドリフト低減ノズル性能

その他

  • 研究課題名:環境負荷低減に寄与する農業機械・装置等の開発
  • 課題ID:800c
  • 予算区分:経常、緊プロ
  • 研究期間:2006~2009年度
  • 研究担当者:水上智道、吉田隆延、宮原佳彦、猪之奥康治、太田智彦、山田祐一、金光幹雄、安食惠治、牧野英二、臼井善彦、(株)丸山製作所、ヤマホ工業(株)
  • 発表論文等: