感水紙面に付着した液斑の被覆面積率を迅速に算出する画像処理ソフト

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要約

農薬飛散試験などで測定地点に設置された感水紙面に付着した液斑の被覆面積率の算出を行う画像処理ソフト。本ソフトは市販の画像処理ソフトよりも簡易かつ迅速に被覆面積率を求めることができる。

  • キーワード:感水紙、被覆面積率、画像処理、ソフトウェア、ドリフト
  • 担当:生研センター・生産システム研究部・生育管理システム研究
  • 代表連絡先:電話048-654-7000
  • 区分:共通基盤・作業技術
  • 分類:研究・普及

背景・ねらい

液剤散布機のドリフト(漂流飛散)または作物体付着(散布液の到達度)の測定は、ドリフト捕捉地点や付着測定点に感水紙を設置し、同紙面へ付着した液斑の被覆程度を目視で評価・判定する方法が一般的である。しかしこの方法では、個人差が生じる恐れがあるため、最近は、市販の画像処理ソフトを使用して感水紙面の付着液斑画像から被覆面積率を算出する方法が採られることがある。被覆面積率の算出には、画像処理用ソフトの購入費用に加え、多数の感水紙を対象に熟練者が目視で、二値化処理の閾値設定やドリフト以外の付着による変色部を判断する必要があるため、多くの労力、時間を要する。そこで、感水紙面に付着した液斑の被覆面積率を簡易かつ迅速に算出することができる画像処理ソフトを開発する。

成果の内容・特徴

  • 開発したソフトは、「C♯」でプログラミングされた、Windowsパソコン上(モニタの必要解像度は800×600程度)で使用する画像処理ソフトであり、Windows2000 Service Pack3以降のバージョンで動作する。
  • 開発ソフトは、ドリフト試験(異なる試験日も可)等で一般的に利用される76×52mmの感水紙をA4判サイズの台紙に最多で8枚貼付されたものを市販イメージスキャナで取り込んだBMP形式のカラー画像(推奨解像度400dpi程度)を処理対象画像としている(図1)。
  • 開発ソフトは、処理対象画像中の感水紙8枚各々について、液斑(感水紙の素地が液滴の付着により青色に変色した部分)と未変色部(感水紙の素地で淡い黄色の部分)を二値化処理するための閾値を判別分析により自動算出し、これに基づいて二値化処理、付着液斑の被覆面積率(青色に変色した部分の画素数/処理対象領域の画素数)の算出を行う。さらに、液斑の重なりの有無や液滴の大きさに応じてラベリング処理を行い、一定画素数以上の塊が出された場合は、ドリフトした微粒子以外の大きな液滴の付着や指紋等による変色部分として除去し、結果を出力表示する(図2)。
  • 測定開始から被覆面積率算出までの一連の処理はワンクリック操作で簡易かつ迅速に行うことができ、算出結果はCSV形式のファイルとして保存可能である。
  • 開発ソフトは、8枚の感水紙を同時に自動処理(市販ソフトは1枚毎の処理)することが可能であるため、入力画像の読み込みから被覆面積率の保存までの所要時間が1分程度であり、市販ソフトを使用した場合と比較して作業時間が1/4以下で済む(表1)。
  • 開発ソフトは、市販ソフトの操作に熟練した測定者が同じ測定を行った場合と比較して、同等の被覆面積率を算出できる(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 感水紙を用いたドリフトや薬液付着等に測定・評価に使用できる。
  • 測定者が閾値の上限値を手動調整することで、吸湿して変色した感水紙にも対応できる。
  • 職務作成プログラムとして登録済み。公立試験場、大学、民間企業で使用中(14件)。

具体的データ

図1 開発ソフトの実行画面の例

図2 被覆面積率の算出処理フロー

表1 開発ソフトと市販ソフトによる被覆面積率算出時間の比較

図3 開発ソフトと市販ソフトで算出した被覆面積率算出値の関係

その他

  • 研究課題名:環境負荷低減に寄与する農業機械・装置等の開発
  • 課題ID:800c
  • 予算区分:経常、所内特研、緊プロ
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:臼井善彦、宮原佳彦、水上智道、林和信、猪之奥康治、太田智彦、山田祐一、牧野英二、安食惠治、窪田陽介(新潟大VBL)、中野和弘(新潟大)
  • 発表論文等:
  • 1)窪田ら(2010)農業情報研究、19(2):16-21
    2)宮原ら(2009)職務作成プログラム登録、機構-S08