乗用型水田除草機と米ぬか散布を組み合わせた水田内除草技術

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要約

乗用田植機装着式の水田用除草機(高精度水田除草機)と側条施肥装置を用いて、田植え同時米ぬか散布と機械除草同時米ぬか散布とを組み合わせた作業を行うことにより、除草機単独による作業よりも除草作業を1回低減可能で除草効果が得られる水田内除草技術。

  • キーワード:水田用除草機、機械除草、米ぬか、減農薬
  • 担当:生研センター・生産システム研究部・生育管理システム研究、中央農研
  • 代表連絡先:電話048-654-7000
  • 区分:共通基盤・作業技術
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

生研センターでは、これまでに除草剤等による環境負荷の低減を目的として、乗用型の水田用除草機(高精度水田用除草機)の開発と除草機を用いた水田用複合除草技術の研究を行ってきた。水田用除草機は平成13年より市販化され、減農薬栽培や有機農業に従事する農家で利用されている。しかし、水田用除草機のみを用いての雑草管理は容易でなく、その利用技術も農家によって多種多様であり、体系化されていないのが現状である。

成果の内容・特徴

  • 除草に利用する作業機は、側条施肥装置を搭載した多目的田植機(K社製、型式:SPU-650)とこれに装着する方式の高精度水田用除草機(K社製、型式:SJ-6k)に米ぬか散布用ホースを取付けたもので、田植作業および機械除草作業と同時に米ぬかを田面に散布(約80kg/10a)することが可能である(図1)。米ぬか搭載量(側条施肥装置ホッパ容量)は66L、作業速度は0.4~0.5m/sである。
  • 前記1の作業機は、田植え時と機械除草時に同時に米ぬか散布を行うことが可能であり、米ぬか散布と機械除草を組み合せた複合除草作業を利用することによって、ノビエ、カヤツリグサ類、アゼナ類などのコナギを除く草種に対して、発生を低いレベルに抑制することができる(表1)。
  • 前記1の作業機を用いて、米ぬか散布と機械除草を組み合せた複合除草作業を行うことにより、コナギを除く草種に対しては、機械除草単独作業と比較して除草作業の回数を1回減らすことが可能であり、米ぬかを除草時に散布することで、機械除草と同程度の除草効果(コナギを除く)と収量が得られる(表1)。
  • 前記1の作業機を用いて、2期連続で米ぬか散布と機械除草を組み合せた複合除草作業により雑草管理を行った結果、収量は慣行栽培と比べて早植栽培80~105%、普通栽培76~94%となっており、慣行のおよそ8割以上の収量を確保することが可能である(表1、2)。

成果の活用面・留意点

  • 本技術を利用することにより、水田用除草機を有効利用するとともに、除草剤を使用しない環境負荷低減型栽培技術の普及に寄与することができる。
  • 今回利用した米ぬかは、埼玉県内で特殊肥料として流通している粒状米ぬか(米の精)である。また、今回のように側条施肥装置を利用して米ぬか散布を行う場合は、粒径や粒の硬さなどに留意する必要がある。
  • 機械除草による欠株を減らすには、車輪による株の踏みつけや土の巻き上げが少なくなるよう運転に注意する必要がある。なお、幅の狭い車輪を用いれば欠株を減らす効果が高まる。

具体的データ

図1 多目的田植機と水田用除草機による田植え同時米ぬか散布と機械除草同時米ぬか散布

表1 除草方法別の除草効果と欠株率の比較

表2 除草方法別の収量比較

その他

  • 研究課題名:環境負荷低減に寄与する農業機械・装置等の開発
  • 課題ID:800c
  • 予算区分:基盤・委託(所内特研)
  • 研究期間:2006~2009年度
  • 研究担当者:水上智道、吉田隆延、牧野英二、臼井善彦、宮原佳彦、関口孝司(埼玉農総研)、三浦重典(中央農研)
  • 発表論文等: