GPSの速度情報と肥料の流動性指標値により繰出量を調節できるブロードキャスタ

要約

簡易な測定器で測定できる肥料の流動性を示す指標値(FR値)、GPS受信機から得られる速度情報等に基づき肥料の繰出量を調節する機能を備えたブロードキャスタである。5kg/10a程度の少量散布にも対応し、基肥から追肥まで作物を問わず広く利用できる。

  • キーワード:施肥、肥料、車速連動、GPS、繰出量
  • 担当:生研センター・生産システム研究部・大規模機械化システム研究、土壌管理システム研究
  • 代表連絡先:電話048-654-7000
  • 区分:共通基盤・作業技術
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

肥料価格の高騰、環境負荷低減への関心の高まり、大規模生産組織の増加等を背景として、精度の高い施肥作業を高能率に行う施肥機へのニーズが高まっている。
そこで、本研究では、2005年度成果情報「ブロードキャスタの施肥量制御装置(技術・参考)」(肥料のFR値及びGPS受信機から得られる速度情報を利用することにより任意の作業速度で精度の高い施肥量精度を実現する装置)の技術を基礎として、FR値を簡便に測定できる測定器を含めた実用機を開発する。

成果の内容・特徴

  • 開発機は、1ブロードキャスタの繰出量と高い相関を持つFR値を測定するFR値測定器、2FR値とGPSの速度情報に基づき最適なシャッタ開度を決定するコントローラ、3速度情報を得るためのGPS受信機、4シャッタの回動角と開口面積の変化量の関係を最適化し少量散布にも対応できる施肥量調整シャッタ、およびコントローラからの信号によりシャッタ開度を調節する電動アクチュエータを備えた施肥機本体(ブロードキャスタ)から構成される(図1、表)。
  • FR値測定器は、約16Lの貯留部を持ち、底部に肥料を流下させる開口部(φ35mm)が設けられている(図1)。FR値は、20kg袋の肥料を2回に分けて測定器に投入して、それぞれ完全に流下しきるまでの時間を合計し、「投入質量(g)/合計流下時間(s)」を計算することにより決定される。また、FR値測定器の貯留部はシート生地の縫製により製作されているため、容易に折り畳み携行することができる。
  • 少量散布に対応したシャッタを装備しているため、広範囲に施肥量設定が可能であり(表)、作業前にFR値と施肥量(kg/10a)を入力するだけで、1.0m/s~3.0m/sの作業速度で設定施肥量に対し概ね±10%以下の誤差で施肥を行うことができる(図2)。
  • GPSの速度情報による車速連動機能により、作業速度やスリップ率の変化の影響を受けることなく高い施肥量精度を維持できる(図2)。また、ほ場条件に合わせた最適な作業速度を選択し効率的に作業を行うことができる(図3)。
  • 速度情報を取得するGPS受信機が開発機のコントローラに含まれているため、機種や新旧を問わず、開発した施肥機本体の適応馬力に対応する幅広いトラクタで開発機の車速連動機能を利用できる。

成果の活用面・留意点

  • 開発機は、2011年春期から市販される予定である。
  • ほ場特性や作物の生育状況に基づいた施肥設計に従った作業を行うことが可能となるため、肥料投入量の抑制等の効果が期待できる。
  • 造粒されていない有機質肥料や粉状資材など、FR値の測定が困難な資材を使用する場合は、従来機と同様に試し繰出し等により散布量の調整を行う必要がある。

具体的データ

開発機の構成主な仕様

ほ場試験における施肥量精度ほ場条件に合わせて速度を変更 した作業の例

その他

  • 研究課題名:環境負荷低減に寄与する農業機械・装置等の開発
  • 中課題整理番号:800c
  • 予算区分:経常、緊プロ
  • 研究期間:2008~2010年度
  • 研究担当者:林和信、紺屋秀之、堀尾光広、重松健太、吉野知佳、松野更和、西村洋、(株)IHIスター、(株)ササキコーポレーション