高速作業でも安定した出芽率が得られる高精度テンサイ施肥播種機

要約

張出側板を有する船底型播種作溝部により、慣行播種機の1.5倍の高速作業でも高精度に播種するテンサイ施肥播種機である。トリプル鎮圧輪により出芽率は87%で、慣行作業よりも33%程度の高能率化が可能である。

  • キーワード:テンサイ、直播栽培、施肥播種機、高精度、高速作業
  • 担当:生研センター・園芸工学研究部・野菜栽培工学研究
  • 代表連絡先:電話048-654-7000
  • 区分:共通基盤・作業技術
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

大規模畑輪作農家の経営の安定化には、テンサイおよび他の輪作作物の経営規模拡大が求められる。手間のかかるテンサイの移植栽培は規模拡大の障害となっており、省力的な直播栽培の普及を図る必要がある。しかも、現行のテンサイ直播作業は、汎用播種機の部品交換による対応で行っており、干ばつ時の高速作業時等、比較的小粒のテンサイコーティング種子では鎮圧が不十分で、出芽率が低い場合があり、収量が安定せず、直播栽培面積は10%程度にとどまっている。そこで、慣行方式の1.5倍程度の高速作業でも精度良く施肥播種が行え、安定した出芽が得られるテンサイ施肥播種機を開発する。

成果の内容・特徴

  • 開発機は、慣行畝幅(60~66cm)4畝用テンサイ施肥播種機である。播種機構は、播種操出部、播種作溝部、鎮圧輪、種子鎮圧輪、覆土鎮圧輪等で構成される。施肥機構は、施肥繰出部、肥料タンク、施肥コントローラ等で構成される。(図1)。
  • 播種機構は、播種作溝部が船底型で側板を下方に張り出すことにより、種子をV字溝へ落下させ、かつ側方への飛び出しを防止し、播種精度を高めている。鎮圧は、播種直後の種子鎮圧輪、狭幅の覆土鎮圧輪等の3種類の鎮圧輪により鎮圧強度を高め、干ばつ等における出芽率の低下を防いでいる。また、種子鎮圧輪は、接地駆動輪から強制駆動し、種子鎮圧輪のスリップによる覆土の引きずりを防止している。(図1)
  • 施肥機構は、施肥操出部がモータ駆動の横溝ロール式で、接地駆動輪の回転速度を検出し、操出モータの回転速度により操出量を調整している。
  • 開発機の播種性能は、1.5m/sの高速作業でも、欠株率が約3%、播種深さの標準偏差が約3mm、横ずれの標準偏差が約4mmと高精度な播種が可能で、出芽率は87%である(表1)。
  • 施肥性能は、施肥量の変動係数が4%以下、播種位置の左右30~60mm、深さ60~90mmの適正範囲に70%以上を条施肥する。
  • 作業能率は80~95a/hと、作業速度1.0m/sの慣行機より1/3程度の向上が見込める(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 開発機は2011年度に市販化の予定である。
  • 輪作農家の経営規模拡大に活用できる。
  • 適用トラクタは44~59kWである。

具体的データ

高精度テンサイ施肥播種機の概略

播種精度と出芽率

作業能率

その他

  • 研究課題名:生産性向上による農業構造改革の加速化に寄与する農業機械・装置等の開発
  • 中課題整理番号:800a
  • 予算区分:経常、緊プロ
  • 研究期間:2006~2010年度
  • 研究担当者:市来秀之、吉永慶太、Nguyen Van Nang、八谷 満、宮崎昌宏、金光幹雄、
                       サークル機工(株)、梶山 努(十勝農試)、白旗雅樹(十勝農試)、鈴木 剛(十勝農試)、
                       原 圭祐(十勝農試)、吉田邦彦(十勝農試)、稲野一郎(中央農試)、大波正寿(北見農試)