脱穀所要動力の低減を可能とするくし状のこぎ歯を備えた脱穀機構

要約

くし状のこぎ歯を備えたこぎ胴およびフィードチェン等から構成される脱穀機構である。本機構を用いると、2条刈り自脱コンバインの脱穀所要動力を大幅に低減できるため、自脱コンバインの省エネルギ化が可能となる。

  • キーワード:自脱コンバイン、脱穀部、省エネルギ化、くし状のこぎ歯、簡素化
  • 担当:生研センター・生産システム研究部・収穫システム研究
  • 代表連絡先:電話048-654-7000
  • 区分:共通基盤・作業技術
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

日本の水稲や小麦の収穫作業には、一般的に自脱コンバインが利用されている。自脱コンバインのエンジンは、年々高出力化されており、収穫作業のより一層の省力化、高能率化が図られているものの、依然として、コンバインの構造が複雑であるため価格が高いこと、コンバインの稼働期間が限定しており利用経費が高くなること等の理由から、機械経費に占める収穫作業に要する経費の低減が進んでいないのが現状である。そこで、収穫作業の低コスト化を目的に、自脱コンバインの主要構成要素であり、また、自脱コンバインの全動力の約40%を消費する脱穀部に関して、省エネルギで簡素な脱穀機構を開発する。

成果の内容・特徴

  • 本脱穀機構は、主として、こぎ胴、フィードチェン等から構成され、受網のない簡素な構造である(図1、表)。こぎ胴は、脱穀所要動力の低減を可能とするくし状のこぎ歯を備えており、こぎ胴軸がフィードチェンによって搬送される水稲の稈に対して垂直になるように、こぎ胴が配置されている(図1)。
  • 水稲は、稈の株元をフィードチェンによって把持され、稈の穂先のみを脱穀されるため、発生わら量が少なく、多くの枝梗が残る(図2)。
  • 本脱穀機構を2条刈り自脱コンバインに採用した場合、脱穀率は87~98%である(図3)。また、発生わら量は4~7%程度であり、脱穀所要動力は0.22~0.71kWである(図3)。コンバインのエンジン出力(5.9kW)に対する脱穀所要動力の割合は4~12%程度である。
  • 本脱穀機構によって脱穀された穀粒の品質は、単粒割合が82~89%、枝梗付着粒割合が1~3%、穂切粒割合が5~14%である。一般的な自脱コンバインの受網から漏下した穀粒の品質(単粒割合:約84%、枝梗付着粒割合:約5%、穂切粒割合:約2%)と比較し、穂切粒割合は高い傾向にあるものの、枝梗付着粒割合は低い傾向にある。

成果の活用面・留意点

  • くし状のこぎ歯を備えた本脱穀機構を用いることによって、従来の自脱コンバインの脱穀所要動力を大幅に低減させることができ、自脱コンバインの省エネルギ化や低コスト化に寄与できる。
  • くし状のこぎ歯を備えた本脱穀機構を用いることによって、発生わら量が少なくなるため、選別部等を簡素化できる可能性がある。
  • 穂切粒への対応として、単粒化を促進させるための機構等と組み合わせることが望ましい。

具体的データ

くし状のこぎ歯を備えた脱穀機構の概要

くし状のこぎ歯を備えた脱穀機構の主要諸元

脱穀された稈の穂先の様子脱穀所要動力および精度試験結果

その他

  • 研究課題名:生産性向上による農業構造改革の加速化に寄与する農業機械・装置等の開発
  • 中課題整理番号:800a
  • 予算区分:経常、所内特研
  • 研究期間:2006~2010年度
  • 研究担当者:栗原英治、梅田直円、嶋津光辰、宮原佳彦、杉山隆夫、日髙靖之、中山夏希、
                       川瀬公嗣、三菱農機(株)