熟練者のナレッジを導入したコンバイン清掃マニュアル作成手法

要約

熟練者の清掃作業のビデオ映像およびインタビューから摘出した清掃ナレッジを導入したコンバイン清掃マニュアルの作成手法。経験の少ない作業者でも熟練者の清掃技術を学習でき、精度の高い清掃作業が可能となり機内残留穀粒量を低減できる。

  • キーワード:コンバイン、清掃、マニュアル、熟練者、ナレッジ
  • 担当:生研センター・生産システム研究部・収穫システム研究
  • 代表連絡先:電話048-654-7000
  • 区分:共通基盤・作業技術
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

異品種や異作物の混入防止は、食の安全・安心を確保するうえで重要である。収穫作業時の混入はコンバイン内の残留穀粒の影響が大きい。混入防止には精度の高い清掃が求められるが、従来のマニュアルでは掃除口の開閉方法の記述に留まっているものが多い。コンバイン開発技術者等(熟練者)は、滞留しやすい箇所や作業方法等の知識があるため、精度の高い清掃が可能である。一方、熟練者の知識や技能を継承する手法の1つとして農作業ナレッジの摘出方法が提案されているが(H21研究成果情報「農作業ナレッジの種類と摘出方法」、山本ら)。そこで、収穫作業時の混入を防止するため、熟練者の清掃技術を導入したコンバイン清掃マニュアル(ナレッジ清掃マニュアル)の作成手法を開発する。

成果の内容・特徴

  • ナレッジ清掃マニュアル(2条刈り自脱コンバイン用)の作成例を図1に示す。コンバイン清掃マニュアルへ熟練者の清掃ナレッジを導入する手順は、まず、清掃ナレッジを摘出、整理し、次に、文章化する。
  • 清掃ナレッジを摘出するため、熟練者の清掃作業をビデオ撮影し、その映像を熟練者に提示しながら作業に関する知識をインタビュー形式で聞き取る。ビデオ撮影では、より詳細な手元作業を撮影するため小型ビデオカメラを使う(図2)。インタビューでは、最初に、作業した熟練者に作業全体に対する注意点等について聞き取る。また、作業した熟練者だけではなく他の熟練者にも参加してもらうことで、より効率的な作業工程や判断の基準等を導入できる。
  • 清掃ナレッジを整理するため、技能分析表を作成する(表)。ビデオ映像から「作業工程」、「作業内容」、「具体的な行動の仕方」、インタビューから「行動のポイント・判断の基準」をまとめる。
  • 技能分析表から清掃マニュアルへの文章化の例を図1に基づき示す。「1章はじめに」の作業のポイントでは、熟練者が作業全体を通して気を付ける点を示す(図1a))。「3章作業手順」では、技能分析表の「工程」、「作業内容」に従い全体の作業の流れを示し(図1b))、「具体的な行動の仕方」に従い個別作業の順序を示す。個別作業には「行動のポイント・判断の基準」のカンやコツを図や赤文字等を使って表す(図1c))。
  • コンバイン清掃の経験が少ない被験者がナレッジ清掃マニュアルを参考に清掃した場合、従来のマニュアルを参考に清掃した場合と比較して、機体内に残留する穀粒が低減する(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 農機メーカ等がより高精度なコンバイン清掃マニュアルを作成するのに利用できる。
  • 今回作成したナレッジ清掃マニュアルは、配布可能である。
  • コンバインの構造が異なる場合、機種毎にマニュアルの作成が必要である。

具体的データ

ナレッジ清掃マニュアルの例

技能分析表の例

手元作業の撮影の様子ナレッジ清掃マニュアルの清掃精度への効果

その他

  • 研究課題名:生産性向上による農業構造改革の加速化に寄与する農業機械・装置等の開発
  • 中課題整理番号:800a
  • 予算区分:経常、委託プロ(共存)
  • 研究期間:2009~2010年度
  • 研究担当者:梅田直円、栗原英治、嶋津光辰、川瀬公嗣、山本淳子、梅本雅