汎用型飼料収穫機による自脱コンバインから排出される稲わらの収集

要約

牧草用アタッチメントを装着した汎用型飼料収穫機にホイールレーキを取り付ける改造を施すと、自脱コンバインから無切断で排出される稲わらを、90%程度の回収率、22~33a/hの作業能率で収集でき、高密度なロールベールに成形できる。

  • キーワード:汎用型飼料収穫機、自脱コンバイン、稲わら、ロールベール、高密度成形
  • 担当:生研センター・特別研究チーム(エネルギー)
  • 代表連絡先:048-654-7000
  • 区分:バイオマス、共通基盤・作業技術、畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

汎用型飼料収穫機(平成19年共通基盤研究成果情報)(以下、「収穫機」)は、牧草、トウモロコシおよび飼料イネ等を収穫できるが、稲わらの収集にも利用することで負担面積が増加し、単位面積当たりの減価償却費の低減が期待できる。そこで収穫機を用い、自脱コンバイン(以下、「コンバイン」)から排出された稲わらを集草作業を行わずに収集する方法を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 収穫機の牧草用アタッチメントの両側にタイトベーラ用のホイールレーキ(φ0.8m)を取り付ける改造を施すと、作業幅が拡大し、4条刈りコンバインから排出された無切断の稲わらの2行程分を一度に収集できる(図1、2)。
  • 4条刈りコンバインで刈り取った17a圃場(品種:こがねもち、稲わら収量739kg/10a、含水率41%、無切断稲わら)において、収穫機で稲わら列に沿って8条分ずつ収集し、ロールベールを4個成形した時の作業能率は33a/h、圃場からの回収率は94%(刈り株を含まない)で、収穫機の燃料消費量は7.1L/hである。
  • 排わら圧砕処理装置(平成21年度バイオマス研究成果情報)を装着した2条刈りコンバインで刈取りした16a圃場(品種:コシヒカリ、稲わら収量598kg/10a、含水率20%、圧砕処理稲わら)において、収穫機で約6条分ずつ収集し、ロールベールを3個成形した時の作業能率は22a/h、回収率は87%で、燃料消費量は6.4L/hである。
  • 収穫機で設定切断長19mmに細断・収集された稲わら(含水率20~67%)は、質量117~288kg、乾物密度120~200kg/m3程度にロールベール成形され(図1、3)、ロールベール放出時のロスは1%以内である。
  • 生稲わらサイレージを調製する場合にはコンバイン収穫直後から収集可能で、降雨の際の品質低下を防げる。ベールラッパによってラップサイロに調製し、12ヶ月間保管した稲わら(2008年10月調製、含水率43%)は、かびの発生が見られず、乳酸菌の添加をしなくても良好な発酵品質である(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 収穫機の適用範囲拡大により、単位面積当たりの減価償却費を低減できる。
  • 無処理、無切断の稲わらを詰まらせずに収集するには、横向きに落ちている稲わらの外端部にホイールレーキを当てて、稲わらが斜めになるようにして拾い上げると良い。
  • 土を拾い上げると収穫部の詰まりやロールベールの品質の悪化の原因となるため、コンバインの旋回作業等で土が盛り上がった部分の作業は避けることが望ましい。
  • 自脱コンバインから5cm程度に切断して排出された稲わらは、ほとんど回収できず、17cm程度の稲わらは50%程度、27cm程度の稲わらは80%程度の回収率となる。

具体的データ

汎用型飼料収穫機による稲わら収集作業風景とロールベール

無切断稲わら収集作業模式図稲わらの含水率とベールの乾物密度

生稲わらサイレージの発酵品質

その他

  • 研究課題名:循環型社会の形成に寄与する農業機械・装置等の開発
  • 課題ID:800d
  • 予算区分:経常、委託プロ(バイオマス)
  • 研究期間:2007~2010年度
  • 研究担当者:川出哲生、橘保宏、梅田直円、栗原英治、嶋津光辰、日髙靖之、野田崇啓、
                       横江未央、志藤博克、中山夏希、川瀬公嗣、馬場未帆(埼玉農総セ畜研)、
                       関誠(新潟農総研畜セ)、金谷千津子、高平寧子(富山農総セ畜研)