バレイショ等のほ場で効率良く除礫が可能な高能率石礫除去機
要約
回転ふるい方式の既存機よりもけん引抵抗が小さく、広い作業幅で高速作業ができるコンベア方式の石礫除去機である。既存機に比べ、時間当たりの作業能率が約2倍になり、全長が短く小回りが効く。
- キーワード:石礫除去機、掘取りディスク、星形ロールコンベア、バーコンベア
- 担当:農業機械化促進・省力化農業機械
- 代表連絡先:電話 048-654-7000
- 研究所名:生物系特定産業技術研究支援センター・園芸工学研究部
- 分類:普及成果情報
背景・ねらい
ほ場の石礫はバレイショのみならず、ニンジンや豆類等の収穫時の能率低下、農産物の傷、機械の損傷の原因となっている。慣行の大型回転ふるい方式の石礫除去機は、けん引抵抗が大きく、作業速度が遅い。さらに全長が長く、旋回半径が大きいため、作業能率が低い。価格が割高で普及が進んでいない。
成果の内容・特徴
- 開発機は、土塊を掘取り、砕土し、石礫を分離して回収する機械で、PTO駆動、けん引式、全長5.7m、全幅2.9m、全重3.2tである。既存機よりも全長が約18%コンパクトで、取り回し易く、作業幅は1.87m、作業深さは最大30cm、石礫タンクの容量は約1.4m3である。適応トラクタは73.5kW(100PS)以上である(図1)。
- 土塊の掘取りは、2枚のディスクとショベル型の掘取刃で、効率的に掘取りができるために、広い作業幅での作業が可能である。砕土・石礫分離は、星形ロールコンベア、バーコンベアで行う。星形ロールコンベアは土塊を粉砕するとともに、隙間から粉砕した土壌を落とし、石礫を分離する。バーコンベアは、星形ロールコンベア上を流れる土塊の速度を制御し、分離性能を変えることができる。バーコンベアの回転速度をより速くすることにより、星形ロールコンベア上を流れる土塊の速度を上げ、30mmより小さい石礫を除去することができる。星形ロールコンベアは回転ふるい式よりも目詰まりが起こりにくく、麦跡等の残渣があるほ場でも、石礫除去作業が可能である。
- 褐色低地土における作業精度は、作業深さ27cm、作業速度0.7m/sで、作業前の石礫割合(容積比)7.4%が作業後に0.1%以下となり、良好である(表1)。
- 作業深さ25cmのけん引抵抗は、既存機が作業速度0.15m/sで27kNに対し、開発機は作業速度0.54m/sでも23kNと小さく、高速作業が可能である(表2)。
- 作業深さ25cm、作業幅1.87m、作業速度0.71m/sでの作業では、ほ場作業量0.35ha/hと、既存機での作業深さ20cmの場合に比較して約95%向上する(図2)。
普及のための参考情報
- 普及対象
バレイショ等、輪作作物生産者、およびニンジン等、根菜類生産者
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等
北海道畑輪作地域、2,800ha、100台(5年間)
- その他
2012年度に市販化の予定である。
具体的データ



(市来秀之、八谷 満)
その他
- 中課題名:農作業の更なる省力化に資する農業機械・装置の開発
- 中課題番号:600a0
- 予算区分:交付金、委託プロ(水田潜在能力)
- 研究期間:2005~2011年度
- 研究担当者:市来秀之、八谷 満、ヌウェン バン ナン、宮崎昌宏、東洋農機(株)
- 発表論文等:市来ら「石礫除去機」 特開2011-217741