府県産の貯蔵乾燥されたタマネギを対象とした高能率な調製装置

要約

コンテナ単位で投入された府県産の貯蔵乾燥されたタマネギを1玉ずつ分離し、向きを一定に揃え、根と葉の切除を1秒に1個程度の速度で行う。2名1組で作業を行い、手作業の2倍程度に相当する1700個/人・h程度のタマネギを処理できる。

  • キーワード:タマネギ、根、葉、調製
  • 担当:農業機械化促進・省力化農業機械
  • 代表連絡先:電話 048-654-7000
  • 研究所名:生物系特定産業技術研究支援センター・園芸工学研究部
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

府県産の貯蔵乾燥されたタマネギは、出荷前にハサミで1玉ずつ根と葉を切り取って出荷しており、10a当たり45時間もの多くの労力を要している。そうした調製作業を農協が受託し、生産者の負担軽減に努めている事例もみられるが、調製作業の時期だけ多くの労力を確保することが難しく、産地からはタマネギの調製作業を省力化する新たな技術開発が強く求められている。そこで、府県産の貯蔵乾燥されたタマネギを対象に、根と葉の調製を高能率に行う装置を開発する。

成果の内容・特徴

  • 本装置は、供給部、整列調製部、選別部、排出部から構成されており、AC100Vを電源とするモータで駆動している(図1)。
  • 供給部には20kgコンテナで2個分のタマネギを貯留することができ、爪付きの上昇コンベアでタマネギをすくい上げて整列調製部にタマネギを供給する。
  • 整列調製部では、ローラコンベアの自転により茎葉を後傾させるようにタマネギの向きを揃え、挟持ベルトでその向きを保持し、直径10cm程度の円柱にラグを螺旋状に巻きつけた螺旋式搬送機構(スクリュウオーガ)に受け渡す。スクリュウオーガは左右一対で、互いに内向きに回転しており、茎葉を引き込むように作用する。これにより、根が上、茎葉が下の状態にタマネギの姿勢を整える(図1)。
  • 上下方向に揃えられたタマネギの大きさを、可変式抵抗器(ポテンショメータ)を用いた球高検出センサで測定し、根切り刃の切断高さを制御して根を切除する。さらにスクリュウオーガ後端に設けた葉切り刃で、2cm程度の長さに茎葉を切り揃える(図1)。
  • 本装置での作業は2名1組を基本とし、1名が供給部へのタマネギの補給および周辺作業、他の1名が選別部において腐敗球などを除去するとともに、調製が不十分であったものの再調製を行う(図2)。
  • 本装置の適切り率については、根と葉のいずれも適切りであったものが86%程度で、機械的損傷はほとんど発生しない。1秒に1個程度の速度でタマネギの根と葉を切除することができ、2名1組で作業を行った場合、腐敗球の除去、調製が不十分であったものの処理を含め、手作業の2倍程度に相当する1700個/人・h程度のタマネギを処理できる(図3、4)。

普及のための参考情報

  • 普及対象:タマネギの共同調製施設
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:佐賀県、兵庫県などを中心とした府県のタマネギ生産地
  • その他:平成24年度中に市販化の予定。本装置は、貯蔵乾燥されたタマネギを対象とした構造のため、十分に乾燥が進んでいない青切りタマネギを調製した場合、玉の部分に傷が付く恐れがある。また、選別部、排出部は、設置レイアウトや利用する収納容器によって構造、寸法は検討する必要がある。

具体的データ

図1 タマネギ調製装置
図2 2名1組での作業
図3 調製前後のタマネギ(品種「ターザン」)図4 作業能率

(貝沼秀夫、藤岡修、紺屋朋子)

その他

  • 中課題名:農作業の更なる省力化に資する農業機械・装置の開発
  • 中課題番号:600a0
  • 予算区分:交付金、第4次緊プロ(共同)
  • 研究期間:2008~2011年度
  • 研究担当者:貝沼秀夫、藤岡修、紺屋朋子、大森定夫、(株)クボタ、松山(株)
  • 発表論文等:特開2010-193800 他2件