2条同時に刈取りできる雪中貯蔵用キャベツ収穫機

要約

狭持ベルトで2条のキャベツそれぞれを保持した状態で茎部を切断し、後方へ送る刈取り機構を備えるキャベツ収穫機である。刈取り後のキャベツを圃場の積雪下で貯蔵する雪中貯蔵用キャベツの収穫を精度良く、かつ毎時12~16aの能率で行うことができる。

  • キーワード:キャベツ、収穫、雪中貯蔵用キャベツ、高能率
  • 担当:農業機械化促進・省力化農業機械
  • 代表連絡先:電話 048-654-7000
  • 研究所名:生物系特定産業技術研究支援センター・園芸工学研究部
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

刈取ったキャベツを圃場の積雪下で貯蔵する雪中貯蔵用キャベツの収穫作業は、降雪前のごく短期間にキャベツ茎部を切断し、そのまま圃場内に並べる。一般にキャベツの収穫作業は、生産労働時間の半分以上を占めるが、雪中貯蔵用キャベツの収穫は硬い茎部を手作業かつ中腰姿勢で切断する作業が辛く、切断作業だけにさらに6~8人時/10aの作業時間を要することから、機械化による軽作業化と高能率化が求められている。

そこで、2条のキャベツを同時に刈取ることができる高能率なキャベツ刈取り機構と、この刈取り機構を利用する雪中貯蔵用キャベツ収穫機を開発し、作業性能を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 雪中貯蔵用キャベツ収穫機は、キャベツ刈取り部、出力12kWのガソリンエンジン、刈取り部を駆動する油圧発生装置、クローラ走行部、および雪中貯蔵期間のキャベツ汚損防止用マルチフィルムを地面に繰り出す機構で構成される乗用型の機械である(図1)。作業速度は、0.32m/sと0.43m/sである(表1)。
  • キャベツ刈取り部は、キャベツを正立状態に引き起こすディバイダ、キャベツ結球部を側方から挟持する挟持ベルト、茎部を切断する回転刃、刈り取ったキャベツを後方へ送る搬送コンベアで構成される。挟持ベルトはキャベツを滑らずに保持できるラグ付きのゴムベルトであり、ベルト周速度は収穫機の作業速度より10%程度速く動作する。
  • 作業速度が低速(0.32m/s)で刈取ったキャベツの結球部には損傷が生じず、また十分な枚数の外葉も結球側に残るなど、本機の収穫作業精度は良好である。作業速度が高速(0.43m/s)では、結球部への損傷が増加する場合がある(表2)。
  • 本機の作業能率は、作業速度が0.43m/sの条件において、ほ場作業量で毎時12~16aである。なお、慣行の手作業でキャベツを刈取る作業の能率は1人あたり毎時1.7aであり、本機の作業能率は手作業の約7~9倍である(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 雪中貯蔵用キャベツの収穫において、キャベツ茎部の切断作業に活用できる。なお、雪中貯蔵用キャベツの収穫では、6~10畝ごとにマルチフィルムを繰り出しながらその上に刈取ったキャベツを落とし、さらに近傍の畝のキャベツも人手でマルチフィルム上に寄せ集めて並べる作業が別途必要となる。
  • 本機が対応する畝幅は60~66cm、畝高は0~15cmである。また、挟持ベルトが挟持できる幅(キャベツ結球部直径)は最大270mmまで対応する。
  • 作業精度はキャベツの生育状態に大きく影響され、結球部が畝間まで完全に倒伏しているキャベツは刈取りできない。

具体的データ

図1 雪中貯蔵用キャベツ収穫機表1 諸元表
表2 収穫作業精度図2 収穫作業能率

(深山大介、青木 循、矢野悠紀)

その他

  • 中課題名:農作業の更なる省力化に資する農業機械・装置の開発
  • 中課題番号:600a0
  • 予算区分:交付金・所内特研
  • 研究期間:2011年度
  • 研究担当者:深山大介、青木 循、矢野悠紀、宮崎昌宏、(株)マメトラ農機
  • 発表論文等:宮崎ら「結球野菜収穫機の結球部刈取り装置」特開2010-268763